ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、エティックス・クイックステップ)が逃げのキッカケをつくり、最後まで逃げ切って勝利しました。
ナイロ・キンタナ(スペイン、モビスター)は、アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)と協力して、マイヨロホが逃げるという前代未聞の展開に持ち込み、総合2位のクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)に大差をつけてゴールすることに成功しました。
コースプロフィール
レーススタートと同時に総合争いが勃発
レース開始時点から、集団前方にティンコフの選手が多く集まっていました。
ニュートラル走行を終えて、レースが始まると同時にティンコフ勢がアタックを開始します。
集団が一列棒状に伸びてくると、ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、エティックス・クイックステップ)が集団から少し先行します。
ブランビッラの動きに同調して、逃げに乗りたい選手が追いかけ、更に集団のスピードが上がります。
ここで、何とアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)自らアタックをして、後方との差をつけにかかります。
コンタドールをチェックしていたと思われるナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)も、前方に位置取ることが出来ました。
そうして、先頭で逃げ集団が形成されました。
集団後方に位置取っていたチームスカイ勢は、この動きに即座に対応することが出来ず、後方に取り残されていたクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)は、単独で前の集団に追いつきます。
先行する逃げ集団を、追走する集団にはフルームを含め、スカイのアシストはダビ・ロペスガルシア(スペイン、チームスカイ)とサルヴァトーレ・プッチオ(イタリア、チームスカイ)の2名だけです。
この追走集団には、エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・バイクエクスチェンジ)、サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ)、ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アスタナ)、サムエル・サンチェス(スペイン、BMCレーシング)、アンドリュー・タランスキー(アメリカ、キャノンデール)がいます。レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、チームスカイ)は更に後方集団に取り残されています。
先行する逃げ集団は14名です。メンバーは、
ホナタン・カストロビエホ(スペイン、モビスター)
ルーベン・フェルナンデス(スペイン)
ナイロ・キンタナ(スペイン、モビスター)
アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)
イヴァン・ロヴニー(ロシア、ティンコフ)
ユーリ・トロフィモフ(ロシア、ティンコフ)
ケニー・エリッソンド(フランス、FDJ)
ファビオ・フェリーネ(イタリア、トレック・セガフレード)
マトヴェイ・マミキン(ロシア、カチューシャ)
ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、エティックス・クイックステップ)
ダビド・デラクルス(スペイン、エティックス・クイックステップ)
ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール)
モレーノ・モゼール(イタリア、キャノンデール)
オマール・フライレ(スペイン、ディメンションデータ)
となっています。
ティンコフもモビスターもアシストを複数名揃えて逃げることに成功しています。
その他の選手も、エース級の強力な選手を揃っていて、超強力な逃げ集団となっています。
何と言ってもマイヨロホが逃げるなんて展開は、聞いたことがありません!
全く予想だにしない、ティンコフとモビスターによる奇襲攻撃が始まりました。
コンタドールも、キンタナもローテーションに加わりながら、追走集団との差を開きにかかります。
追走集団では、残ったアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)を含むモビスターのアシスト陣が集団破壊のようなアタックを繰り返し、結果としてスカイのプッチオが千切れてしまいました。
スカイはフルームの他にロペスガルシア1人しかいないという窮地に追い込まれてしまいました。
3級山岳を迎えて、逃げ集団は追走集団に2分以上の差をつけました。
キンタナは、フルームに対して3分以上の差を、コンタドールは総合2位の座を、ヴァーチャルで獲得している状況です。
一人、また一人と削られるアシスト
3級を下って、2級山岳へと向かうアップダウンの道のりで、追走集団ではアスタナが協力してくれたり、くれなかったりで、スカイ唯一のアシストとなってしまったロペスガルシアが力尽きてしまいます。
すると、オリカ・バイクエクスチェンジがアシストを2人出して、集団牽引を担います。
ダミアン・ホーゾン(オーストラリア、オリカ・バイクエクスチェンジ)が苦悶の表情を浮かべながら、登り坂で牽引しますが、間もなく力尽きます。
2級山岳の登り途中で、はやくもオリカのアシストも全滅してしまい、オリカとスカイはアシストを全て失ってしまいました。
山頂まではサイモン・イェーツ自身が牽いて、下りではサムエル・サンチェス(スペイン、BMCレーシング)が牽きました。
エース格の選手のクライミングとダウンヒルは格が違うため、逃げ集団とのタイム差が1分ほど縮まりました。
しかし、ダウンヒルを終えて、再び平坦路に入ると、今度はアスタナが集団牽引を担っています。フルーム、チャベス、イェーツにとっては心強い味方となりました。
なお、3級山岳は、1位フライレ、2位エリッソンド、2級山岳も同じく1位フライレ、2位エリッソンドでした。
いよいよ1級山岳の登り口に到着
2分のリードを持って、最後の1級山岳の登りに入ります。
逃げ集団は、ティンコフとモビスターのアシストを使い切る走りで、追走集団とのリードを守ります。
アシストを使い切ると、キンタナが先頭固定で引き始めます。というよりは、このまま頂上を目指す走りです。
追走集団では、フルームが先頭を牽く場面も見られますが、ペースを上げることが出来ません。
そのまま追走集団の後方まで下がってしまい、ペースが落ちた追走集団から次々と選手が飛び出して行きます。
チャベスやスカルポーニらのペースアップに、フルームはついていくことが出来ません。
先頭では、キンタナがギアを一段階上げてスピードアップします。
ここで、コンタドールが遅れを喫してしまいます。
キンタナについていけたのは、ブランビッラ1人だけです。
そのままラスト1kmを切って、残り200m付近からブランビッラがスプリントを開始します。
そのままブランビッラが先頭でゴール!ジロ・デ・イタリアに続く、グランツール2勝目をあげました。
3秒遅れでキンタナがフィニッシュ。チャベスは1分53秒遅れ、フルームは2分40秒遅れでした。
総合上位は、連日入れ替わりが起きました。
フルームは何とか2位を守りましたが、キンタナに3分37秒差をつけられます。
コンタドールは表彰台まであと5秒まで迫りました。
レオポルド・ケーニッヒは総合11位以下に転落してしまいます。
前日の第14ステージはチームスカイとオリカ・バイクエクスチェンジの勝利でしたが、この日は敗北を、特にスカイにとっては致命的とも言える大敗北を喫してしまいました。
個人的には、チームスカイを応援しているので、この速報を書くのが辛いところです…。
客観的に見れば、今日のレースほど、劇的で面白いレースは無いなと思います。
スタート直後から、総合上位のコンタドールのアタック、マイヨロホのキンタナが逃げに乗るという、通常のセオリーでは全く考えられない展開で、新しいロードレースの戦略を打ち出したとも言える歴史的なレースであることに間違いないでしょう。
ツール・ド・フランスでは、フルーム擁するチームスカイが、キンタナたちに対して、常識外のアタックを2度も決めて総合優勝を手中に収めたこともあり、そのお返しと言わんばかりに見事にやられた展開とも言えましょう。
ブランビッラはグランツール2勝目、敢闘賞はコンタドール
今年のジロ・デ・イタリア第8ステージ以来の勝利です。
敢闘賞はコンタドールが獲得しています。
宣言通りに、3分以上のリードを築くことに成功したキンタナは、いつも以上に笑顔が眩しかったです。
第16ステージは、後半は延々と下るステージ
激しい2日間の総合バトルを終えて、第16ステージは見た目上は繋ぎステージのような構成です。
ラスト20km弱が完全に平坦路となっていることもあり、通常であれば集団スプリントとなる展開が予想されます。
しかし、スプリンターが少ないステージなので、ステージ優勝した選手たちによる逃げ切りが決まりやすいと思います。
唯一、注意すべきポイントは、ラスト20km弱の区間では海沿いを走るため、風が強かったときには、再び総合勢にタイム差がつくような動きが見られるかもしれません。