クリス・フルーム(Chris Froome)【イギリス、チームスカイ】

プロフィール

名前:クリス・フルーム(Chris Froome)
国籍:イギリス
チーム:チームスカイ

年齢:[get_age birth=”19850520″]才
身長:186cm
体重:72kg
脚質:オールラウンダー、クライマー、TTスペシャリスト

主な戦績

2006年ツアー・オブ・モーリシャス(非UCIカテゴリー)総合優勝
2007年ツアー・オブ・ジャパン第6伊豆ステージ優勝
2008年ツール・ド・フランス総合83位
2009年ジロ・デ・イタリア総合34位
2011年ブエルタ・ア・エスパーニャ総合2位、第17ステージ優勝、マイヨロホ着用1日
2012年ツール・ド・フランス総合2位、第7ステージ優勝
2012年ロンドン五輪個人TT銅メダル
2012年ブエルタ・ア・エスパーニャ総合4位
2013年ツール・ド・ロマンディ総合優勝
2013年クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ総合優勝
2013年ツール・ド・フランス総合優勝、第8、15、17(ITT)ステージ優勝
2014年ツール・ド・ロマンディ総合優勝
2014年ブエルタ・ア・エスパーニャ総合2位
2015年クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ総合優勝
2015年ツール・ド・フランス総合優勝、第10ステージ優勝、山岳賞
2016年クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ総合優勝
2016年ツール・ド・フランス総合優勝、第8・18(ITT)ステージ優勝
2016年リオ五輪個人TT銅メダル

レビュー

ケニアのナイロビで生まれ、14歳のときに南アフリカに移住します。南アフリカでは、ヨハネスブルグ大学で経済学を学ぶかたわら、サイクルロードレースにも出場し、クライマーとしての才能を発揮していました。

大学を中退し、2007年南アフリカに本拠地を置くコニカミノルタというコンチネンタルチームでプロデビューを果たします。

この頃は、まだケニア国籍でレースに出場していました。

2008年に、母方の両祖父母の母国であるイギリスに移住し、バルロワールドというイギリスのプロコンチネンタルチームに移籍します。

当時のチームメイトには、ゲラント・トーマス(イギリス、現チームスカイ)、スティーブ・カミングス(イギリス、現ディメンションデータ)、ダリル・インピー(南アフリカ、現ディメンションデータ)、ロバート・ハンター(南アフリカ、2013年にガーミン・シャープで引退)、エンリコ・ガスパロット(イタリア、ワンティ)、バーデン・クック(オーストラリア、2013年オリカ・グリーンエッジで引退)などがいました。トーマスとは、この頃からずっとチームメイトです。

この年に、ツール・ド・フランスに初出場を果たします。エースのマウリシオ・ソレール(コロンビア)のアシストとして出場しましたが、ソレールが第5ステージで途中でリタイア、その後もチームメイトが続々とリタイアする中、フルームは総合83位で完走しました。

2009年はジロ・デ・イタリアを総合34位で完走し、いよいよグランツールレーサーとしての片鱗を感じさせましたが、同年をもってバルロワールドは解散となります。

同時にイギリス国内で新しく立ち上がったスカイ・プロチーム(現・チームスカイ)へと移籍を果たします。

2010年ジロでは、膝の怪我に苦しんでいました。第19ステージで、警察のモトバイクに捕まって山を登ろうとしていることが発覚し、レースから退場を命じられてしまいました。

飛躍の年となったのは、2011年シーズンです。チームスカイに与えられた絶対的な命題は、エースであるブラッドリー・ウィギンス(イギリス)を勝たせることです。

当時のフルームは才能は認められるものの、好不調の波が激しいライダーという扱いでした。

2011年ブエルタに出場すると、フルームは安定した走りを見せ、第10ステージの個人TTでステージ2位に入り、マイヨロホを獲得しました。2位はヤコブ・フグルサング(デンマーク、レオパード・トレック)で12秒差、ウィギンスは20秒差の3位でした。

続く第11ステージでは、マイヨロホを着るフルームがウィギンスのために献身的な走りを見せ、ウィギンスが総合1位に浮上することに成功します。(フルームは、総合1位の自分がウィギンスをアシストすることに納得していませんでした)

しかし、第15ステージで『魔の山』アングリルの頂上ゴールへと向かうステージで、伏兵・ファンホセ・コーボがステージ優勝を飾り、ウィギンスは失速してしまいます。この結果、コーボが総合1位、20秒差でフルーム、46秒差でウィギンスとなります。

第17ステージ、この日に逆転しない限り総合優勝は実質不可能となるステージで、フルームはコーボに勝ち、ステージ優勝を果たします。コーボは耐えて、失ったタイムを最小限に抑えたため、フルームに13秒差をつけ総合1位を死守しました。この日もウィギンスはタイムを失い、トップから1分41秒差となりました。

結局、このタイム差のままコーボが総合優勝、フルームは総合2位となりました。もし、第11ステージでフルームが自身のために走っていたとしたら…と思うと、やり切れない大会となったのでした。

2012年シーズン、フルームは移籍も考えましたがチームスカイへの残留を決めます。それは、ツール・ド・フランスで自身の総合優勝を狙って走っても良いという約束があったからだそうです。

しかし、フタを開けてみると、2012年ツールもウィギンスのための走りを要求され、実際にウィギンスは総合優勝、フルームは総合2位でした。

第7ステージでは、ウィギンスをアシストしながらも、最後はステージ優勝を飾る走りを見せました。第11ステージでは、フルームのペースアップにウィギンスがついて行けない場面が見られるなど、誰が見てもギクシャクした主従関係であることが明白で、ウィギンスとフルームどちらが強いのかと聞かれれば、フルームと答える人が大半だったと思います。

ということもあり、翌年のツールはウィギンスがフルームをアシストすると約束したそうです。

2013年、とうとうフルームの時代が訪れます。結局、ウィギンスは故障のため、ツールは欠場し、フルームをエースとする体制で挑みます。

第8ステージで独走ステージ優勝を飾り、マイヨ・ジョーヌを獲得すると、第18ステージでハンガーノックに陥り、あわやという場面はありましたが、リッチー・ポート(オーストラリア)の絶妙なアシストもあって、リードを守りぬき、結果的に2位のナイロ・キンタナ(コロンビア)に5分3秒差のタイム差をつけて総合優勝を果たします。

2014年ツールでは、第5ステージに2度の落車の影響で途中リタイアしてしまいます。

2015年ツールでは、再び圧倒的な強さを見せつけ、総合優勝を果たします。

あまりの強さと、それまでのウィギンスとの確執などで、あまり良いイメージを持たれていなかったフルームは、第14ステージで観客に『お前はドーピングしているだろ!』と暴言を浴びせられながら、尿をかけられるアクシデントもありました。

2016年シーズンも、順風満帆と言えるシーズンを送り、6月のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネでは総合優勝します。大会中の表彰式では、フルームが登壇するたびに、フランス人観客から大ブーイングを浴びせられる状況です。

そうしたなかで迎えたツール・ド・フランス第8ステージで、終盤のダウンヒルで奇襲的なアタックを仕掛け、クラウチングスタイルでトップチューブに座りながらペダリングするという離れ業を見せつけ、逃げ切りステージ優勝を果たし、マイヨ・ジョーヌを獲得します。

さらに、第12ステージでは、モン・ヴァントゥの山頂ゴール寸前で、一緒に走っていたリッチー・ポート(BMCレーシング)、バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)が、沿道からあふれた観客との衝突を避けるため急停止したモトバイクに激突して3人とも落車してしまいます。

フルームのバイクは、後続のモトバイクに踏まれ乗車不可能なほど破損してしまい、ゴール目指してランニングするシーンが見られました。長いツール・ド・フランスの歴史の中でも、まさしく前代未聞の事件です。

さらに第14ステージでは、平坦ステージにもかかわらず、レース終盤にマイヨ・ヴェールを着るペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)と共にアタックし、そのまま逃げ切るという常識では考えられないアタックを成功させました。

こうして築いたリードを、盤石のアシスト陣で守りぬき、3度目の総合優勝を果たします。

というように、現地のフランス人を始め、フランスメディアも納得せざるを得ないほど、エンターテイメント性の高い勝ち方をしたため、世間のフルームへの見方が一気に変わりました。

ヒール的な存在から、人格者へと格上げです。

また、フルームはTwitterに頻繁にツイートをしています。しかも、なかなかに面白いツイートをしてくれるのです。

わたしが最も面白いと思ったツイートは、件のモン・ヴァントゥでのランニング事件の翌々日のツイートです。

当時、ポケモンGOがリリースされ、世界中で社会現象となっていたことを揶揄して、『謎は解決したよ』という言葉と共に、ポケモンGOの画像をアップするという茶目っ気たっぷりのツイートです。

これだけの人格者でなければ、チームスカイのアシスト陣もフルームのために精根尽き果てるほどの走りを見せることはないでしょう。

2016年ツールに出場し、その後リオ五輪に出場したチームスカイのメンバーは軒並み酷い成績でした。わたしには、ツールで力を使い果たしたように見えました。

しばらくは、クリス・フルームを中心にサイクルロードレース界は回っていくことでしょう。

フルームを打倒する新世代のライダーに期待しつつ、フルームの圧倒的な走りを楽しんでいきたいと思います。

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