サイバナ

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コラム パリ〜ニース2017

アラフィリップ、フランス人として20年ぶりのパリ〜ニース総合優勝なるか?

まさか、個人TTを勝つとは夢にも思わなかった。

ジュリアン・アラフィリップは真のオールラウンダーへと進化するのか?』という記事を書いた翌日に、ジュリアン・アラフィリップは14.5kmの個人TTでステージ2位のアルベルト・コンタドールに19秒差をつける圧勝と言える劇的なワールドツアー初勝利をあげた。

スプリント能力、クライム能力の高さは特筆すべきものがあるが、器用貧乏感が否めず、これまでのキャリアでは2位の座で甘んじることがあまりにも多かった。
だが2017年3月8日、ついにアラフィリップはポディウムのてっぺんに登ることが許された。

前回投稿した記事では、「アラフィリップがポディウムの頂点に立った時、新たな伝説は始まるだろう。」という文章で締めくくった。
この言葉は決して煽りではなく、わたしの真意である。

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わたしがアラフィリップに惚れ込む理由

なぜ、ここまでアラフィリップを推しているのか。
理由は昨年のツアー・オブ・カリフォルニアにある。

ツアー・オブ・カリフォルニア第3ステージは、ラスト12kmで平均勾配8%の超級山岳の山頂へフィニッシュするクイーンステージだった。
アラフィリップは、このステージで優勝した。

それだけでは、惚れ込む理由にはならない。
決定的だったのは、以降のステージでペーター・サガン、フレフ・ヴァンアーヴェルマート、アレクサンダー・クリストフ、マーク・カヴェンディッシュらトップスプリンターたちのスプリントバトルにアラフィリップも参加していたからだ。

平均勾配8%・登坂距離12kmにもなる超級山岳を先頭でフィニッシュするような選手が、平坦ステージで集団スプリントに参加している事実に、心を揺さぶられたのだ。
こんな選手見たことないぞ、と。

エディ・メルクスやローラン・フィニョンといったレジェンドたちの活躍ぶりは、人伝えだったり、文字やデータで見たことがあるだけだった。
アラフィリップは、わたし自身が初めてリアルタイムで遭遇した、まるで古のレジェンドたちのような走りだったのだ。
わたしはすっかりアラフィリップに魅了されてしまった。

パリ〜ニースの総合優勝を射程圏に捉える

さて、話をいまに戻したい。

パリ〜ニース第4ステージは、最初は平坦だが、ラスト3kmは平均勾配7.7%の坂を登る、複合型の個人TTステージだった。

アラフィリップはレース後に「このステージは、わたしに最適だった。」と語っていたが、アルベルト・コンタドール、リッチー・ポート、ヨン・イサギーレなど登坂力とTT力に優れた選手が何名もいたため、アラフィリップが優勝候補だとはほとんどの人が思っていなかったことだろう。

そのような状況で、アラフィリップは中間計測ポイントでトップタイムを叩き出す。
こんなに飛ばして、最後まで体力は持つのか?という疑いをよそに、登りでも全開で踏み続けた。

フィニッシュ寸前では、口から粘度の高そうなよだれを垂れ流しながら、鬼のような形相で一心不乱の走りを見せていた。

フィニッシュラインに飛び込んだとき、コンタドールに19秒という大差をつけていた。
屈指のTTスペシャリストたちを押しのけて、アラフィリップがステージ優勝を遂げたのだ。

ゴール後は地面に倒れ込んでいた。
限界まで自身を追い込む走りだったのだろう。

この結果、総合1位のアルノー・デマールを上回り、マイヨ・ジョーヌを獲得した。
総合優勝が現実的なものになってきた。

フランス人によるパリ〜ニース総合優勝は20年ぶりとなる

1933年から開催されいている歴史あるレースであるパリ〜ニースは、今年で75回目だ。
過去、最も多くの総合優勝者を輩出している国は、もちろん開催国であるフランスだ。

しかし、最近はサイクルロードレース界全体で、フランス人選手の低迷が著しいためか、フランス人によるパリ〜ニース総合優勝は、1997年のローラン・ジャラベールまで遡ることになる。
直近の20年で、フランス人は全く勝てていなかったのだ。

ローラン・ジャラベールと言えば、自身の名前が峠道につくほどの劇的な活躍を見せたスーパースターだ。
1995年はミラノ〜サンレモを制した上、ブエルタ・ア・エスパーニャで総合優勝を果たすなど、真のオールラウンダーと言える脚質を持っていた。
パリ〜ニースは1995〜1997年に3連覇を果たし、さらにフレーシュ・ワロンヌやイル・ロンバルディアでも優勝経験を持っている。

まさにアラフィリップが目指すべき方向性に合致した偉大なる大先輩がジャラベールなのである。

総合優勝を狙うアラフィリップにとって関門となるのが、第7ステージの登りだろう。

フィニッシュ地点へと至るクイヨール峠は、登坂距離15.7km・平均勾配7.1%となっている。
ツアー・オブ・カリフォルニアでは似たようなクラスの登りを誰よりも速く登り切っていたが、パリ〜ニースではカリフォルニアとは比較にならないほど強力なクライマーのライバルたちがひしめいている。

総合首位のアラフィリップに対して、ライバルチームたちが猛攻をしかけることは想像に難くない。

強力なチームメンバーがアラフィリップをサポート

しかし、アラフィリップには非常に強力なチームメイトがいる。

まず、現在総合5位につけているダン・マーティンだ。
前戦のボルタ・アオ・アルガルベのクイーンステージで優勝した好調さをいかんなく発揮している。

ダン・マーティンは、クラシックレースにも強くダンシングで一気に加速するような登りを得意としている。
コンタドールやセルジオルイス・エナオなどのアタックを潰す役割の期待がかかる。

もう一人強力なクライマーが控えている。
第4ステージで6位だったダビド・デラクルスである。
昨年のブエルタではステージ優勝をあげ、マイヨロホを着用した経験も持つ。

ダン・マーティンとデラクルスの二人が、アラフィリップを強力にサポートしてくれるのだ。

さらに山岳の登り口や、ライバルチームのアシストに攻撃する役割としては、フィリップ・ジルベールが適任だ。
アルデンヌ・クラシックの達人が、集団破壊を仕掛けてくることだろう。

平坦路での護衛は、TTスペシャリストのイヴ・ランパートに、ニュージーランドTTチャンピオンのジャック・バウアーが担当する。

ファビオ・サバティーニはマルセル・キッテル専用のリードアウトを務める。
キッテルの勝利を狙いつつもアラフィリップの総合を守るための十分すぎる戦力なのだ。

欲を言えば、クイヨール峠で自ら攻撃を仕掛けてステージ優勝を飾るアラフィリップの勇姿を見たい。
アラフィリップに、それだけの力はすでに十分持っているはずだ。

たとえ勝てなくとも、がっかりすることはない。
アラフィリップの伝説はすでに始まっているのだから。

名だたるレジェンドと肩を並べうる存在となるその日まで。

Rendez-Vous sur le vélo…

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