モビスター戦力分析!【2017年シーズン】

クリス・フルームのツール3連覇を阻むことが出来るなら、やはりナイロ・キンタナに期待したくなるモビスターの戦力分析です。

名うてのクライマー揃いのチームになっています。

モビスター2017ロースター

アンドレイ・アマドール(コスタリカ)
ヴィネル・アナコナ(コロンビア)
ホルヘ・アルカス(スペイン)
カルロス・ベタンクール(コロンビア)
リカルド・カラパス(エクアドル)
ホナタン・カストロビエホ(スペイン)
アレックス・ダウセット(イギリス)
イマノル・エルヴィーティ(スペイン)
ルーベン・フェルナンデス(スペイン)
ホセ・エラダ(スペイン)
ヘスス・エラダ(スペイン)
ゴルカ・イサギーレ(スペイン)
アドリアーノ・マローリ(イタリア)
ダニエル・モレーノ(スペイン)
ネルソン・オリヴェイラ(ポルトガル)
アントニオ・ペドレロ(スペイン)
ナイロ・キンタナ(コロンビア)
ダイヤー・キンタナ(コロンビア)
ホセホアキン・ロハス(スペイン)
マルク・ソレール(スペイン)
ローリー・サザーランド(ニュージーランド)
ジャシャ・シュッターリン(ドイツ)
アレハンドロ・バルベルデ(スペイン)

・新加入選手

カルロス・バルベロ(スペイン)←カハ・ルラル(PCT、スペイン)
ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア)←ティンコフ
エクトル・カレテロ(スペイン)←Lizarte(スペインのアマチュアチーム)
ビクトル・デラパルテ(スペイン)←CCC・スプランディ・ポルコウィチェ(PCT、ポーランド)

・退団選手

ヨン・イザギーレ(スペイン)→バーレーン・メリダ
ファンホセ・ロバト(スペイン)→ロットNLユンボ
ハビエル・モレーノ(スペイン)→バーレーン・メリダ
フランシスコ・ベントソ(スペイン)→BMCレーシング
ジョバンニ・ヴィスコンティ(イタリア)→バーレーン・メリダ

絶対的エース・キンタナは、宿敵・フルームを倒して、悲願のツール制覇を狙う

2013年総合2位、2015年総合2位、2016年総合3位と、ツール・ド・フランス出場3回続けて表彰台を獲得していますが、いずれの年もクリス・フルームが総合優勝しています。

フルームとの総合タイム差は2013年は4分20秒差、2015年は1分12秒差、2016年は4分21秒差でした。しかし、2016年ブエルタではフルームに1分23秒差をつけて総合優勝を果たしています。

ブエルタとツールの違いは激坂の有無です。ブエルタでは最大勾配20%を越えるような激坂が度々登場しますが、ツールでは超級山岳でも平均勾配8〜10%の登りが多くなっています。

キンタナは厳しい登りでダンシングで攻撃を仕掛けることが得意で、フルームはどんな登りでも一定のペース走行で登ることを得意としています。したがって、キンタナはブエルタ向き、フルームはツール向きと言えましょう。

ところが、2017年のツールのコースには、キンタナ向きの激坂が登場するコースプロフィールになっている上、毎回フルームに大きなタイム差をつけられるタイムトライアルの距離が短く、失うタイムが少なくて済む見通しです。

2017年に27歳を迎えるキンタナにとって、絶好のフルームを討つ機会だと言えましょう。

フルームに勝つためには、厳しい山岳でフルームにタイム差をつけリードを築き、タイムトライアルでリードを守り抜くしかありません。両者がトラブル無くレースを進行したら、非常に接戦となるに違いありません。

キンタナをアシストする精鋭クライマーたち

筆頭はアレハンドロ・バルベルデです。もはやセカンドエースと言える、実績・実力の持ち主です。

2016年は3つのグランツール全てに出場し、全て完走。それもジロは総合3位、ツールは総合6位、ブエルタは総合12位と、驚異的な好成績を残しています。

山岳では最終盤どころか、フィニッシュ地点までキンタナの側に残っているようなアシストであり、高いダウンヒル技術も持っているため、登り・下りどちらでもアシストが可能です。

バルベルデに続くのは、ダニエル・モレーノです。グランツール出場17回全て完走し、2016年ブエルタは総合8位でした。バルベルデと共に最終盤までキンタナを強力にアシストすることの出来るピュアクライマーです。

そして、個人的に大いに注目している選手が、ルーベン・フェルナンデスです。2016年ブエルタ第3ステージで、キンタナたちのいるメイン集団から鋭いアタックを仕掛け、ステージ3位でフィニッシュし、マイヨロホを獲得しました。

その後も、バルベルデやモレーノに匹敵するか、それ以上の登坂力を見せる場面もあり、クライマーとしての才能を表しつつある期待のレーサーです。

忘れてはならないのが、コスタリカ人のアンドレイ・アマドールです。2015年ジロ総合4位、2016年ジロ総合8位と、グランツールで好成績を残しています。

CCCから獲得した、ビクトル・デラパルテも山岳アシストのデプスを深める、クライマーです。

さらにドメスティークな山岳アシストとしては、ホセ&ヘスス・エラダ兄弟 、カルロス・ベタンクール、ヴィネル・アナコナなどが控えています。

若手選手では、マルク・ソレールに注目です。2015年ツール・ド・ラブニール総合優勝、2016年ルート・ドゥ・スッドでステージ1勝&新人賞を獲得しました。ルーベン・フェルナンデスも2013年ツール・ド・ラブニール総合優勝、キンタナも2010年ツール・ド・ラブニール総合優勝しています。ルーベン・フェルナンデスはブエルタでマイヨロホを着用するほどの選手に成長しているので、ソレールにも大いに期待がかかります。

クライマーの枚数では、ワールドチーム中No.1の多さを誇っています。クライマー集団がステージレースを中心にUCIポイントを稼いだ結果、UCIチームランキングを4連覇中です。

ベンナーティの補強により、チームのウィークポイントを見事に埋める

解散したティンコフから、ダニエーレ・ベンナーティを獲得しました。2016年のツールで、モビスターが苦戦を強いられたのは大型ルーラーの不在だったとも言えましょう。

チーム内には、TTスペシャリストのヨン・イザギーレ、ホナタン・カストロビエホ、ネルソン・オリヴェイラがいますが、ヨン・イサギーレとカストロビエホはそれぞれ身長173cmと171cmと小柄です。オリヴェイラは180cmありますが、他のチームの平坦スペシャリストに比べると、多少力が劣ります。

他にはツールとブエルタに出場したイマノル・エルヴィーティや、ブエルタに出場したローリー・サザーランドや、2016年はグランツール未出場のアレックス・ダウセットがいましたが、絶対的な大型ルーラーの枚数が不足していました。そのため、ツール第11ステージでフルームが平坦路で奇襲攻撃を仕掛けたときも、モビスターが追わねばならないにもかかわらず、すぐに追撃体勢を整えることが出来ずにフルームからタイムを失う結果となりました。エルヴィーティはとても素晴らしい選手ですが、いかんせん枚数が足りていなかったのです。

同じ轍を踏まないためにも、強力な平坦スペシャリストの補強は不可欠でした。

ベンナーティがいれば、平坦区間での安全確保はもちろん、横風区間でチームスカイに逆襲を仕掛けることも可能です。

ヨン・イサギーレはバーレーン・メリダに移籍してしまいましたが、カストロビエホはその軽量さを活かして山岳でのアシストも可能で、万能な平坦スペシャリストと言えましょう。

ベンナーティの補強で、平坦路での安定感が一気に増しました。

2017年ツールのメンバー例

ナイロ・キンタナ
アレハンドロ・バルベルデ
ダニエル・モレーノ
ルーベン・フェルナンデス
ヴィネル・アナコナ
カルロス・ベタンクール
ホナタン・カストロビエホ
イマノル・エルヴィーティ
ダニエーレ・ベンナーティ

コロンビア人3名・スペイン人5名・イタリア人1名という構成で、クライマー6名・ルーラー3名となっています。

チームスカイのフルメンバーに引けを取らない、実力のある布陣と言えましょう。モビスターにはチームスカイに真っ向勝負を挑むだけのチームパワーがあるのです。

バルベルデはステージレーサーとしてだけでなく、パンチャーとしても世界屈指の選手

バルベルデは、リエージュ~バストーニュ~リエージュ通算3勝、フレーシュ・ワロンヌ通算4勝で現在3連覇中という、ワンデーレースでの凄まじい実績を誇っています。クライマーらしからぬ、高いスプリント能力も持ち合わせています。

やはり、春のクラシックではバルベルデがエースを担うでしょう。

というより、バルベルデ以外ワンデーレースでは、なかなか結果が出せないように思えます。

エルヴィーティは2016年のパリ〜ルーベ9位、ツール・デ・フランドル7位と、石畳クラシックで突然好成績を収めたので、2017年はひょっとしたらひょっとするかもしれないかもと、ちょっぴり期待しています。

スプリンターは2名移籍して、1名獲得

エーススプリンターはホセホアキン・ロハスでしょう。

しかし、近年のロハスはルーラーとしての走りや、山岳序盤までの集団牽引を担うことが多く、脚質がスプリンターからルーラーへと移行しつつあるようにも見えます。

また、フランシスコ・ベントソとファンホセ・ロバトの2人のスプリンターが移籍してしまいました。代わりにカハルラルからカルロス・バルベロを獲得しました。

バルベロはビッグレースでの勝利経験はありませんが、2017年に26歳を迎え、今後の伸びしろに期待したい選手です。

打倒フルーム、打倒スカイを合言葉に

ステージレース:★★★★★
ワンデーレース:★★★★☆
ステージ優勝:★★★★★
スプリント:★☆☆☆☆

モビスターから移籍した選手は5名全員ワールドチームへと移籍しています。戦力外として移籍したのではなく、他のチームにより良い条件で引き抜かれた可能性が高いです。

つまり、モビスターの総合チーム力のダウンは免れない状況です。

その中で、ベンナーティの補強は極めてインパクトがあり、長年の懸案事項だった平坦スペシャリストの獲得に成功しました。

キンタナの脇を固めるクライマーは申し分ない実力者たちが揃っているので、ベンナーティ率いる平坦スペシャリストたちと共に、チームスカイのフルームを打ち破り、悲願のマイヨ・ジョーヌ獲得を狙うでしょう。

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