山だらけの今年のボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャを走る有力選手のプレビューです。
1ヶ月半後に迫ったジロ・デ・イタリアに照準を合わせて調整する選手。
1ヶ月後にあるアムステルゴールドレース、フレーシュ・ワロンヌ、そしてリエージュ~バストーニュ~リエージュ(LBL)のアルデンヌ・クラシックに向けて調整したい選手。
7月のツール・ド・フランスに向けてトレーニング強度を上げていきたい選手。
様々な思惑を抱えた選手たちが出場します。
もちろん、直近に迫ったジロやアルデンヌクラシックに目標を設定している選手の方が仕上がりは早いです。
以上のことを押さえたうえで、目標ごとに有力選手をピックアップしてみました。
目標がアルデンヌ・クラシックの選手
アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
目標は、フレーシュ・ワロンヌの4連覇と、2年ぶりのLBLの優勝です。
その後は、ジロをパスして、ツールに出場する見込みです。
今シーズンは無類の強さを発揮しており、ブエルタ・ア・ムルシアでは70kmの独走逃げ切りを決めたり、ブエルタ・ア・アンダルシアでは総合優勝しています。
ただ、1クラスやHCクラスでのレースの話です。
今季初のワールドツアーでは、今まで以上に強力なライバル選手たちが出場します。
ここまでの好調ぶりは本物なのか要チェックです。
ダン・マーティン(アイルランド、クイックステップ・フロアーズ)
2013年LBL優勝、2015年フレーシュ・ワロンヌ3位と相性の良いアルデンヌ・クラシックを狙います。
実績から言えば、間違いなくダン・マーティンがアルデンヌ・クラシックのエースでしょう。
しかし、アラフィリップやジャンルーカ・ブランビッラもいます。
二人の調子次第では、ダン・マーティンとダブルエースのような形になるかもしれません。
カタルーニャで登りに対する格の違いを見せ、チーム内での存在感を一層強めて地位を固めたいところです。
今季は、ボルタ・アオ・アルガルベ総合6位&ステージ1勝、パリ〜ニース総合3位と好調です。
目標がジロ・デ・イタリアの選手
ミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ)
ジロ・デ・イタリアでは、ゲラント・トーマスとともにエースを務める予定です。
しかし、今季はブエルタ・ア・アンダルシア総合6位、ティレーノ〜アドリアティコ総合31位となっています。
また、チーム内での総合成績順位は、どちらも3番手につけています。
ランダよりも調子の良い選手が、チーム内に2名いるような状況では、ジロのエースを張るには少々心許ありません。
ゲラント・トーマスが非常に好調であるため、ランダもそろそろコンディションを上げていきたいところです。
ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)
ティレーノ~アドリアティコでは、TTTでホイール破損事故が起きた影響で、大きくタイムを失いました。
にもかかわらず、第2ステージでの逃げ切り勝利を含め最後まで攻め続けて総合5位でフィニッシュしました。
ティレーノではナイロ・キンタナに次ぐ登坂力を見せていたので、ジロでの表彰台獲得のみならず総合優勝さえ狙えることでしょう。
元々はTTスペシャリストの脚質なだけに、ティレーノ以上に厳しい登りへの対応に注目です。
カタルーニャの山岳をしっかりとこなせるようであれば、マリア・ローザ獲得は非常に現実的なものになります。
ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)
今季はツアー・ダウンアンダー総合6位、ティレーノ~アドリアティコ総合2位と、クライマーに混じって山岳コースをそつなくこなしています。
ジロでは総合狙いではなく、ステージ狙いだとは思いますが、2015年ブエルタ・ア・エスパーニャのトム・ドゥムランのように、ひょっとしたら総合上位に入ってしまうのではないかという期待感があります。
長い登りでもTTばりのペース走行は健在だと思われるので、超級山岳でどれくらい登れるのか注目です。
ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)
昨年のツール以降、全く良いところがありません。
今季もアブダビツアー総合57位、ティレーノ~アドリアティコ総合21位となっていて、勝負どころの山岳では早々に脱落しているイメージしかありません。
同僚のローハン・デニスの方が登れているので、もはやヴァンガーデレンには期待できないな、というのが本音です。
ジロでは単独エースを担う予定だっただけに、意地を見せてほしいところです。
アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)
サイモン・イェーツとともにジロで総合上位を狙いますが、真の目標はその先にあります。
今季はGPインダストリア・アルティジャナートで優勝し、ティレーノ~アドリアティコでも総合2位につけていましたが、胃腸のトラブルにより第5ステージでDNFでした。
体調を考慮しなければ、脚そのものは好調です。
病み上がりの身体で、いきなりハードなステージに対応できるか心配です。
サイモン・イェーツも好調なので、兄弟揃ってコンディションをあげていきたいところです。
イルヌール・ザッカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)
今季はアブダビツアー総合2位、パリ〜ニース総合6位と一定の成績は残してはいますが、今ひとつパンチ力が足りない印象があります。
長い登りはザッカリンの得意とする分野なので、昨年のツールで見せたようなキレ味鋭いクライムに期待しています。
バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)
今季は、ブエルタ・サンフアン総合優勝、アブダビツアー総合4位、ティレーノ~アドリアティコ総合9位という成績です。
サンフアンでは持ち前のTT力の高さでもぎとった総合優勝です。
アブダビツアーでは先行したルイ・コスタとザッカリンを積極的に追った結果、総合4位に浮上しました。
ティレーノ~アドリアティコでも先頭集団についていってフィニッシュした結果の総合9位です。
つまり、モレマ自ら仕掛ける場面がまだ見られていません。
TT力の高いモレマなので、ジロの総合優勝を狙うなら、それでもいいかもしれませんが、山岳で攻めるモレマも見てみたいものです。
ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNL・ユンボ)
今季はブエルタ・ア・バレンシアナ総合8位、アブダビツアー総合21位、パリ〜ニースは第7ステージでDNSでした。
ですが、ここまでは昨年と同じような戦績です。
昨年のカタルーニャも総合39位と凡庸な成績でしたが、続くツール・ド・ヨークシャー総合5位と調子をあげてから、ジロ・デ・イタリアでフィーバーしました。
第19ステージでのクラッシュさえ無ければ、クライスヴァイクが総合優勝していたことでしょう。
今年もカタルーニャの次はヨークシャーと、昨年同様のプランを組んでいます。
調整がうまくいくことを見守りたいところです。
ヒュー・カーシー(イギリス、キャノンデール・ドラパック)
昨年のカタルーニャで総合9位に入り、新人賞を獲得しています。
ダビド・フォルモロもジロを狙ってカタルーニャに出場しますが、個人的にはヒュー・カーシーの総合に期待しています。
22歳と非常に若く、伸びしろたっぷりの選手なので、イキの良いヒルクライムを見たいです。
アンドリュー・タランスキー(アメリカ、キャノンデール・ドラパック)
ジロではなく、同時期に行われるツアー・オブ・カリフォルニアが目標です。
しかし、アメリカ人のタランスキーにとって、カリフォルニアのレースはツール・ド・フランス以上に大事な目標です。
カリフォルニアにも登場するような、長い登りへの対応が注目ポイントです。
気になるところは、カタルーニャが今季初レースということです。
随分ゆっくりな調整に思えますが、カタルーニャの厳しい山岳に対応できるのでしょうか。
目標がツール・ド・フランスの選手
クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
2015年は総合71位、2016年は総合8位と、絶対王者らしからぬ成績が続いていますが、どちらの年もツール・ド・フランス総合優勝に輝いています。
今回も、2月頭のヘラルド・サンツアー以来、1ヶ月半ぶりのレースです。
総合優勝候補ではありますが、まだまだ調整段階のレースです。
むしろジロ組が、調整段階のフルームについていけないようでは困ります。
しかし、チームスカイはまるでツールのメンバーではないかと思えるくらい、超ベストメンバーで臨んでいます。
そして、今年のチームスカイは出場する全てのレースで、貪欲に勝利を狙っているようにも見えるのです。
フルームの総合優勝を狙うのか、ランダかトーマスで総合優勝を狙うのかは読めませんが、フルームには注目せざるを得ないです。
アルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)
ブエルタ・ア・アンダルシアは1秒差で総合2位、パリ〜ニースは2秒差で総合2位と、ほんの僅かな差で勝利を逃すレースが続いています。
コンタドールには、基本的に調整という概念はありません。
アブダビツアーは珍しく調整目的で走りましたが、グランツール通算7度の総合優勝を誇るスペイン人レーサーは、出場するレース全てで総合優勝を狙ってきます。
モレマとパンタノと3人が揃い踏みする初のレースということもあり、パリ〜ニースの悔しさを払拭する走りが楽しみです。
ツール組ですが、総合優勝候補の筆頭にあげられます。
ヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)
アンディ・シュレク、ヴィンチェンツォ・ニーバリ、ファビオ・アルといったエースを支えるアシストとして活躍してきましたが、2013年ツール総合7位の実力者です。
昨年はリオ五輪で銀メダルを獲得し、ワンデーレーサーとしての適性も見えましたが、本職はやはりステージレーサーでしょう。
今年はジロをパスして、ツールでは久々に単独エースとして出場することが濃厚です。
自己最高順位である総合7位を越えるべく、ライバルたちとの力量を試す良い機会となることでしょう。
ロメン・バルデ(フランス、AG2R)
パリ〜ニースでは”魔法の絨毯”の使いすぎで、失格処分を受けてしまいました。
ここで距離を稼げなかった分、カタルーニャでは負荷をかけた走りをしてくれるのではないかと期待しています。
昨年は総合6位と、フルームより上位で完走しています。
ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)
ティレーノ~アドリアティコでは、いまいち目立った走りをすることが出来ず、総合24位でした。
マイカの基本的な戦略としては、山で遅れずにフィニッシュし続けることで、いつの間にか総合トップ10位内をキープするという雰囲気があります。
様々な山が登場するレースで、強力なライバルたちと共に、失うタイム差を最小限にとどめておけばまた、総合トップ10位内にいそうな気がします。
ルイス・メインチェス(南アフリカ、UAEチームエミレーツ)
今年25歳となり、マイヨ・ブランの対象としてはラストイヤーとなります。
昨年、マイヨ・ブランに輝いたアダム・イェーツはツールに出ません。
したがって、メインチェスにとってはマイヨ・ブランを獲得する大きなチャンスです。
ダリル・インピーがマイヨ・ジョーヌを、ダニエル・テクレハイマノがマイヨ・アポワルージュを一時的に着用したことはありましたが、アフリカ人として各賞ジャージを確定された選手はいません。
カタルーニャでの25歳以下の選手で総合上位が期待されるのは、アラフィリップ、アダム・イェーツ、ヒュー・カーシーとメインチェスです。
若手同士の覇権争いにも注目です。
特別枠
新城幸也(日本、バーレーン・メリダ)
我らがユキヤも出場します!
しかも、ニーバリやヨン・イザギーレといった総合系の選手は出場しないので、エンリコ・ガスパロットやオンドレイ・ツィンクと共にステージ優勝を狙った走りが出来るのではないかと思います。
第4ステージ、第7ステージはユキヤのような登れるパンチャー向きのコースだと思うので、逃げに乗ってワールドツアー初勝利をもぎ取って欲しいです!
アレ!ユキヤ!!
チームスカイがびっくりするほどガチ
総合トップ10に一体何人送り込むつもりなのか?と思うほど、チームスカイのチーム力がずば抜けて高いです。
山ではチームスカイを中心にレースが展開していくことでしょう。
調整レースの意味合いも強いため、あまり意味はないかもしれませんが、せっかくなので今回も総合優勝など予想したいと思います。
総合1位、アレハンドロ・バルベルデ
総合2位、ゲラント・トーマス
総合3位、アルベルト・コンタドール
山岳賞、トーマス・デヘント
新人賞、アダム・イェーツ
モビスターは、ホナタン・カストロビエホ、アンドレイ・アマドール、イマノル・エルヴィーティとTT力の高い選手を揃えているため、チームスカイに並んでTTTの優勝候補です。
さらにバルベルデは登ってよし、独走よし、スプリントよしといった無敵状態の好調ぶりなので、ダウンヒルでも超級の登りでもライバルを振り切るような走りをしそうな気がします。
2位はゲラント・トーマスです。
基本的にジロでのトーマスの姿勢はTTで稼いだタイムを守ることが基本戦略になると思うので、カタルーニャでも同様の戦略をとるのではないかと思います。
フルームでもランダでもいいのですが、仕上がりの良さはトーマスがNo.1でしょう。
コンタドールはなんだかんだで3位と予想。
どこかでワンミスしそうなのと、決して悪くはないですが、モビスターとチームスカイと比べるとTTTがやや不安なことも加味しています。
山岳賞は、逃げのスーパースペシャリストであるトーマス・デヘントです。
昨年も山岳賞を獲得しています。
新人賞は、アダム・イェーツにしました。
逆にここで新人賞をとるような走りをしてもらわないと、ジロが心配です。
以上、ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャの有力選手たちでした。
ダゾーンでの放送予定は、
第1ステージ:3月20日(月・祝)23:40〜
第2ステージ:3月21日(火)23:45〜
第3ステージ:3月22日(水)23:45〜
第4ステージ:3月23日(木)23:50〜
第5ステージ:3月24日(金)23:50〜
第6ステージ:3月25日(土)未定
第7ステージ:3月26日(日)未定
となっています。
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