※選手の脚質、役割、レビューを書いています。
クリテリウム・デュ・ドーフィネ総合優勝のヤコブ・フグルサング、イタリア選手権優勝のファビオ・アル。
二人のエースを擁するアスタナは、どんな戦略でツールに臨むのか。
アスタナ、ツール出場メンバー
51,ファビオ・アル(イタリア、[get_age birth=”19900703″]歳)
逃げ:★★★★☆
TT力:★★☆☆☆
登坂力:★★★★★
スプリント:★★☆☆☆
記念すべき100回大会となったジロ・デ・イタリア、それもアルの生まれ故郷であるサルデーニャ島がグランデパール。
イタリアの将来を背負って立つであろう、スター選手のために主催者が設計したとしか思えないステージレイアウトだったにも関わらず、アルはトレーニング中の怪我が原因でジロを欠場してしまった。
さらに、代役エースとして出場予定だったミケーレ・スカルポーニも不慮の事故により帰らぬ人となってしまった。
アルの心中は、悲しみ、悔しさ、歯がゆさ、不甲斐なさ、様々な感情に支配されたことだろう。
だが、アルはプロフェッショナルだった。
プロサイクリストなら、走りで全てを表現するしかないとばかりに、ドーフィネでは鮮烈な走りを見せた。
特に第6ステージの超級山岳モン・デュ・シャでは、誰よりも速く山頂まで駆け上がっていった。
結果は総合5位だったが、間接的にフグルサングのアシストをしながら、しかも復帰戦でこの結果は十二分だろう。
さらに、イタリア選手権では、終盤の上りで爆発的な加速を見せて独走逃げ切り勝利を決めた。
その時に着用していたジャージは、スカルポーニのものだったそうだ。
春のトレーニング中にスカルポーニと交換していたものを、大一番で着て出場したのだ。
なお、ゼッケンナンバーは20番だった。
全くの偶然ではあるが、ジロでスカルポーニが背負うはずだった21番より1つだけ上の数字である。
アルの心意気、そして具体的な走りで想いを表現するプロフェッショナルさ。
昨年のツール第20ステージでハンガーノックで失速した時の、あのアルとは別人のようだった。
アルは、ブエルタ・ア・エスパーニャにも出場予定だ。
ツールでは、フグルサングが総合リーダーで、アルはダブルエースながらフグルサングのサポートに回る可能性が高いはずだ。
理想は、フグルサングを総合優勝に導き、自身も表彰台を獲得することだろうか。
52,ダリオ・カタルド(イタリア、[get_age birth=”19850317″]歳)
逃げ:★★☆☆☆
TT力:★★★☆☆
登坂力:★★★★☆
スプリント:★★☆☆☆
アルの欠場、スカルポーニの急逝により、実質的に総合エースとして臨んだジロでは、総合14位とまずまずの走りを見せていた。
そして、グランツール出場17回目にして、初めてのツールを走る。
総合エースの山岳アシストとして活躍が期待される。
53,ヤコブ・フグルサング(デンマーク、[get_age birth=”19850322″]歳)
逃げ:★★★☆☆
TT力:★★★☆☆
登坂力:★★★★★
スプリント:★★★☆☆
クリテリウム・デュ・ドーフィネで総合優勝したことで一気にマイヨジョーヌ候補として期待の声が上がるようになってきた。
しかもクイーンステージ級の第6・8ステージで2勝をあげた勝ち方も良い。
これまでのグランツールでは、誰かのアシストとして走ることがほとんどだった。
ヴィンチェンツォ・ニーバリの移籍によって、今年のツールでは総合エースとして走る。
…という予定で調整していた。
ところが、ファビオ・アルがジロを欠場し、ドーフィネでフグルサングと同様にとてつもなく好調ぶりを発揮した。
アスタナ公式Twitterで発表されたツール出場メンバーの画像のセンターは、フグルサングではなくアルだった。
フグルサングの単独エースではなく、アルとのダブルエースという起用が濃厚そうだ。
とはいえ、わたしはフグルサングとアルのダブルエース起用はうまくいくのではないかと見ている。
もし、綻びが生じるとしたら、フグルサングが結局ツールではいまいちだった時だろう。
その時に、アルはフグルサングを守るのか、自分の成績を優先して置いていくのか。
判断に躊躇することによるタイムロスだけは避けたい。
お互いのためにも、チームのためにも。
キャリア最大のチャンスが訪れたフグルサングの、遙かなる戦いがこれから始まろうとしている。
54,アンドレイ・グリヴコ(ウクライナ、[get_age birth=”19830807″]歳)
https://twitter.com/AstanaTeam/status/877907103394009090
逃げ:★★★★☆
TT力:★★★☆☆
登坂力:★★★☆☆
スプリント:★★☆☆☆
脚質はパンチャーではなく、オールラウンダーに近い、上りもこなせるし独走力も高い選手だ。
整った髪型、眼光の鋭さは、まるで軍人のような風貌で、気性も激しい。
2月のドバイツアーでは、横風区間のポジション争いで身体を寄せてきた(とグリヴコは主張する)マルセル・キッテルに対して、顔面にパンチを食らわしてサングラスを破壊した上に、キッテルのこめかみ部分に裂傷を負わせた。
5月1日から45日間の出場停止処分を食らっていた。
ツールでは、再びキッテルと顔を合わせることになるが、果たして和解しているのだろうか。
アスタナには、スプリンターはいないものの、総合エースを守るために、ポジション争いをする機会はあると思われる。
穏便にレースが進むことを祈るばかりだ。
55,ドミトリー・グルージェフ(カザフスタン、[get_age birth=”19860313″]歳)
逃げ:★★☆☆☆
TT力:★★★☆☆
登坂力:★★★☆☆
スプリント:★★☆☆☆
昨年のカザフスタンTT王者で、今シーズンはアジアTT選手権で優勝した。
ただ、TTスペシャリストと言えるほど、ワールドツアーレベルのTTステージでは好成績は残していない。
そのため、オールラウンダーに近いタイプの選手であろう。
今大会では、平坦アシストを務める見込みだ。
56,バフティヤル・コージャタイエフ(カザフスタン、[get_age birth=”19920328″]歳)
逃げ:★★☆☆☆
TT力:★★☆☆☆
登坂力:★★★☆☆
スプリント:★★☆☆☆
今シーズンはステージレースを中心に走っている。
直近のルート・デュ・スッドでは総合11位とまずまずの結果を残したクライマーだ。
厳しい山岳で、エースのアシストをすることは難しそうだが、経験もかねてのツール参戦だろう。
57,アレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、[get_age birth=”19920907″]歳)
逃げ:★★★★☆
TT力:★★★☆☆
登坂力:★★★☆☆
スプリント:★★☆☆☆
昨年のパリ〜ニース第5ステージでは、逃げ切り勝利を決めた。
独走力の高い、ルーラータイプの選手だ。
今シーズンは、ドワルス・ドール・フラーンデレンで3位表彰台を獲得している。
登坂力もそれなりにあるため、アスタナが得意な前待ち作戦のために逃げに乗せる選手として適任だ。
58,ミカエル・ヴァルグレン(デンマーク、[get_age birth=”19920207″]歳)
逃げ:★★★☆☆
TT力:★★☆☆☆
登坂力:★★★☆☆
スプリント:★★★☆☆
解散したティンコフから移籍してきた、パンチャータイプの選手だ。
昨年のアムステルゴールドレースでは、あわや優勝かと思わせる鮮烈な走りを見せて2位だった。
期待されてアスタナにやってきたが、今シーズンは今のところは完全に不発に終わっている。
ツールでは、平坦アシストを務めつつ、機会があれば逃げに乗ってステージ優勝も狙いたい。
59,アンドレイ・ゼイツ(カザフスタン、[get_age birth=”19861214″]歳)
逃げ:★★★★☆
TT力:★★☆☆☆
登坂力:★★★☆☆
スプリント:★★☆☆☆
2015年、アルのブエルタ総合優勝の立役者の1人だ。
第20ステージで見せた、前待ち作戦からの牽引は見事だった。
ゼイツの魅力は独走力の高さに加え、2012年以来毎年ジロとブエルタに出場して完走している、そのタフネスさである。
今シーズンは、ジロに続いてのグランツール連戦となる。
これは、自身のキャリアで初めてのことだ。
ジロでは、そこまで無茶な走りはしていないはずなので、恐らく疲労面の心配は大丈夫ではないだろうか。
平坦アシストとしての活躍が期待される。
フグルサングとアルのダブルエースが成立するかどうか
アスタナのチームの顔は、フグルサングではなくアルだ。
イタリアチャンピオンジャージもよく目立つし、チームプレゼンテーション時のフォトセッションでもセンターにアルはいた。
あくまでフグルサングが第1エースであると思うのだが、あまりにもアル推しの光景が見られるので、一体どうなることやら。
いくら、それぞれが好調とはいえ、ダブルエースでゴタゴタしながら勝てるほど、甘くはないだろう。
二人が絶妙なコンビネーションを見せて勝つしかない。
そのためには、アルが第2エースとしてフグルサングをサポートすればうまくいくはずなのだ。
ようやく上昇機運が高まってきたアスタナではあるが、果たして運命やいかに。
なるほど。サイバナとしてはフグルサングがエースと見てるんですね。ネット記事を見てると、ほぼアルがエースと見てるようですし、自分も単純に「チーム内序列」からアルが実質エースと思ってました。
元々はジロでアル、ツールでフグルサングがエースという予定でしたから、そのままエースは変えないというパターンもありそうです。
ドフィーネで成績が良かったとはいえ、フグルサングが総合優勝候補というのは少々持ち上げ過ぎな気もしますけど、ベテランの経験値がありますし選手としてピークに達してる年齢でもあります。
レースがスタートして、第5ステージあたりの走りを見てアルかフグルサングか決めるということもあるかも知れませんね。
どちらがエースとして走るにしても、反発せずに噛み合ってもらいたいです。スカルポーニがいたならチームをうまく纏められるだろうと思いますが…。
いちごうさん
なので、どんどん自信が無くなって来ました笑
一応自分の根拠は、
・アルとはいえ、万全のコンディションでなければ100回記念ジロに出さない非情な決断を下した
・フグルサングはツールで単独エースが約束されていた
・ドーフィネで総合優勝したのはフグルサング
ということで、フグルサングを第1エースにすると思っています。
これで、アルがエースでフグルサングがアシストみたいな采配をしたとしたら、本当にフグルサングが不遇すぎてかわいそうです。
今回くらいはチーム・フグルサングで臨んでほしいなあと思います。
実際は、二人の調子を見ながら柔軟に行くんでしょうけど、それだと中途半端になる恐れがありますよね・・・。