2月25日のオムループ・ヘット・ニュースブラッドを皮切りに始まった、フランドルクラシックシリーズの最高峰。
5大モニュメントの一つでもある『ロンド・ファン・フラーンデレン』が、いよいよ開催される。
オランダ語読みを略して『ロンド』、フランス語読みなら『ツール・デ・フランドル』、英語読みなら『ツアー・オブ・フランダース』と呼ばれる伝統の一戦は、今年で101回目を迎える。
昨年の第100回大会は、ペーター・サガンの劇的な独走勝利で幕を閉じた。
連覇を狙うサガンを筆頭に、プロサイクリストならば誰もが臨む”フランドルの王”となるために、全身全霊をかけた男たちの熱き戦いが繰り広げられるだろう。
まさしく人生を懸けた一戦が、いま始まる。
ロンド・ファン・フラーンデレン(ツール・デ・フランドル)2017コースプロフィール
その名の通り、フラーンデレン地方を走るレースだ。
首府であるブリュッセルを除くと、同地方最大の都市であるアントウェルペンをスタートし、アウデナールデへとフィニッシュする全長260kmを走る。
他のフランドルクラシックレースと同様に、パヴェとミュールが断続的に登場するコースレイアウトだ。
むしろ、他のレースがロンドを真似ていると言った方が正確だろう。
ミュール・カペルミュール、オウデ・クワレモント、コッペンベルグ、パテルベルグなど、一度は耳にしたことがあるであろう登りが勢揃いしている。
まさにミュールのオールスター戦だ。
2017年は18ヶ所のミュールが登場する。
最初に登場するのは、115km(残り145km)地点のオウデ・クワレモントだ。
登坂距離2,200m・石畳区間1,500m・平均勾配4.2%・最大勾配11%となっている。
今年は計3回通過するが、いずれも勝負どころで現れる重要なポイントとなるだろう。
残り100kmを切った、165km(残り95km)地点に登場するのがミュール・カペルミュールだ。
登坂距離1,075m・平均勾配9.3%・最大勾配19.8%と威力抜群の激坂である。
2010年大会では、あのファビアン・カンチェラーラが伝説の独走を決めたポイントでもある。
ここで集団をセレクションする動きが活発になることだろう。
205km(残り55km)地点で、2回目のオウデ・クワレモントが登場する。
ここから、209km(残り51km)地点のパテルベルグ、
215km(残り45km)地点のコッペンベルグと、名物ミュールが立て続けに現れる超重要区間だ。
パテルベルグは、登坂距離400m・石畳区間360m・平均勾配12.5%・最大勾配20.0%の正真正銘の激坂である。
コッペンベルグはさらに威力を増して、登坂距離600m・石畳区間600m・平均勾配11.6%・最大勾配22%となっている。
プロの選手でも、自力で登ることが出来ず、自転車を押し歩いて登るシーンが見られるほどの激坂だ。
この三連ミュール区間を通過したころには、本当に強い選手しか先頭集団には残っていないことだろう。
その後も、
220km(残り40km)地点のスティーンビークドリーズ(登坂距離820m・平均勾配7.6%・最大勾配12.8%)、
223km(残り37km)地点のターイエンベルグ(登坂距離800m・石畳区間500m・平均勾配7.2%・最大勾配18%)、
233km(残り27km)地点のクライスベルグ(登坂距離1,875m・石畳区間450m・平均勾配4.8%・最大勾配9%)、
と通過して、
243km(残り17km)地点で3度目のオウデ・クワレモントが登場する。
そして247km(残り13km)地点の2回目のパテルベルグをクリアすると、残り13kmはフィニッシュ地点めがけて平坦路を爆走することとなる。
ミュールを18ヶ所もこなしながら、なおかつ260kmを走破する非常にタフなコースレイアウトが、ロンドの最大の特徴だ。
チーム力、個人力、そして時の運、全てを持ち合わせた真の強者のみが勝つことを許される、伝統のレースである。
登場ミュール一覧
※凡例
()内の数字は、
登坂距離・石畳区間距離・平均勾配・最大勾配
となっている。
1,115km(残り145km)地点 オウデ・クワレモント(2,200m、1,500m、4.2%、11%)
2,126km(残り134km)地点 コルテケール(1,000m、なし、6.4%、17.1%)
3,133km(残り127km)地点 エイケンベルグ(1,250m、1,200m、5.8%、10%)
4,136km(残り124km)地点 ウォルヴェンベルグ(666m、なし、6.8%、17.3%)
5,145km(残り115km)地点 リーベルグ(700m、なし、6.1%、14%)
6,149km(残り111km)地点 ベレンドリース(936m、なし、7.1%、12.3%)
7,154km(残り106km)地点 テンボスセ(450m、なし、6.9%、8.7%)
8,165km(残り95km)地点 ミュール・カペルミュール(1,075m、なし、9.3%、19.8%)
9,183km(残り77km)地点 ポッテルベルグ(1,300m、なし、6.5%、8.0%)
10,189km(残り71km)地点 カナリーベルグ(1,000m、なし、7.7%、14%)
11,205km(残り55km)地点 オウデ・クワレモント(2,200m、1,500m、4.2%、11%)
12,209km(残り51km)地点 パテルベルグ(400m、360m、12.5%、20.0%)
13,215km(残り45km)地点 コッペンベルグ(600m、600m、11.6%、22%)
14,220km(残り40km)地点 ステーンベークドリース(820m、なし、7.6%、12.8%)
15,223km(残り37km)地点 ターイエンベルグ(800m、500m、7.2%、18%)
16,233km(残り27km)地点 クライスベルグ(1,875m、450m、4.8%、9%)
17,243km(残り17km)地点 オウデ・クワレモント(2,200m、1,500m、4.2%、11%)
18,247km(残り13km)地点 パテルベルグ(400m、360m、12.5%、20.0%)
ここ数年のロンドを振り返ってみる
オウデ・クワレモントとパテルベルグを含む周回コースを経て、アウデナールデへとフィニッシュするスタイルに変更になったのは、2012年のことである。
以降、登場するミュールの種類や数に若干のマイナーチェンジがあるが、残り17km地点でオウデ・クワレモントが登場し、残り13km地点のパテルベルグを経てフィニッシュまで平坦路を走るという、最終盤のコースプロフィールは毎年ほぼ同じである。
2012年以降のロンド・ファン・フラーンデレンの終盤の戦いを振り返りたい。
2012年、フランドルクラシック3連勝を飾るボーネンのスプリント勝利
オウデ・クワレモントで元世界チャンピオンのアレッサンドロ・バッランがアタックを仕掛ける。
この動きに追従したのは、フィリッポ・ポッツァートとトム・ボーネンの二人だった。
後続集団に1分以上の差をつけ、逃げ切りが濃厚となる。
パンチャータイプのバッランが何とか独走に持ち込もうとアタックを断続的に仕掛けるが決まらず。
バンチスプリントをボーネンがきっちり勝ち取った。
同年のE3・ハレルベーケ、ヘント〜ウェヴェルヘムを制しており、フランドルクラシック3連勝となった上、ロンド制覇も3度目となった。
なお翌週のパリ〜ルーベも優勝し、北のクラシック全勝という偉業を成し遂げた。
2013年、カンチェラーラ2度目の独走圧勝劇
オウデ・クワレモントでファビアン・カンチェラーラはアタックを仕掛けた。
この動きについていけたのは、ペーター・サガンただ一人だった。
先行していたユルゲン・ルーランズを吸収し、3名のまま最後のパテルベルグへと突入する。
淡々と登り続けるカンチェラーラにルーランズが千切れ、頂上付近ではサガンも取り返しのつかない差をつけられていた。
あとは、得意のTTスタイルで平坦区間の独走を決め、1分27秒差をつけ圧勝した。
2010年以来、2度目のロンド制覇となった。
2014年、スプリントを制したカンチェラーラがロンド連覇
ファビアン・カンチェラーラとセプ・ヴァンマルクは、先行するステイン・ヴァンデンベルフとフレフ・ヴァンアーヴェルマートを追いかけていた。
最後のパテルベルグを越えた残り11km地点で先行していた2名を捉える。
カンチェラーラ以外の3名はベルギー人、という4名による逃げ切りが濃厚となり、牽制とアタック合戦の末にスプリント勝負へと持ち込まれる。
死力を尽くしたスプリント勝負では、わずかにカンチェラーラの力が勝った。
2年連続・3度目の栄冠に輝いた。
2015年、クリストフがノルウェー人初のロンド制覇を果たす
最後から3番目のミュールであるクライスベルグで、アレクサンダー・クリストフはニキ・テルプストラと共にメイン集団から飛び出すことに成功する。
最後のミュールであるパテルベルグでは、追走集団から30秒のリードを築く。
そのまま平坦区間も走り抜き、クリストフは1対1のスプリント勝負をしっかりと制して優勝した。
3位は7秒差でフレフ・ヴァンアーヴェルマート、4位は16秒差でペーター・サガンだった。
2016年、世代交代を完了させたサガンの独走勝利
オウデ・クワレモントでファビアン・カンチェラーラを振り切り、最後のパテルベルグでセプ・ヴァンマルクの二人を振り切って独走に持ち込んだのは、アルカンシェルを着るペーター・サガンだった。
カンチェラーラとヴァンマルクの追走によってタイムを縮められるどころか、サガンは逆に二人を突き放す驚異的な走りを見せる。
25秒差をつけて初のロンド制覇を成し遂げた。
同年限りで引退を決めていたカンチェラーラにとって、ラストロンドは2位で終わりを告げた。
終盤のオウデ・クワレモント、パテルベルグでレースは決まる
独走、逃げ切り、集団スプリント。
パターンは様々だが、最終盤の2つのミュールで優勝に直結する決定的な動きが起きていることは共通している。
もう一つ共通していることは、カンチェラーラ以外はみなスプリンターであることだ。
カンチェラーラクラスのスペシャルな選手は、いまのロードレース界にはいないので、ボーネン・サガン・クリストフのようなスプリンタータイプのパンチャーと言える選手に勝機があると言える。
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