第4のグランツールとも呼ばれるツール・ド・スイスは、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネと並んでツール・ド・フランスの前哨戦として名高い。
だが、コースの厳しさはスイスの方が上だろう。
個人TTを含む全9ステージで争われる。
今回は各ステージのプレビューをお伝えしたい。
ツール・ド・スイス全ステージプレビュー
プロローグ(個人TT):シャム〜シャム(6km)
2009年以降は、短い個人TTからスタートすることが通例となっている。
今年はツーク湖畔にあるシャムがスタート地点に選ばれた。
ほとんどフラットで、全体を通しては下り基調な6kmのコースだ。
トップ選手は6分台前半で一気に駆け抜けることだろう。
第2ステージ:シャム〜シャム(172.7km)
前日に引き続き、シャムをスタートして、大きな周回コースを4周して再びシャムにフィニッシュするステージだ。
途中、4回通過する2級山岳ホルベンは、登坂距離2km・平均勾配9%となっている。
それなりのパンチ力を持つ登りであるため、脱落するスプリンターは多くなると思われる。
登りに強いパンチャー向きのステージであり、生き残った選手たちによる集団スプリント勝負となるか、逃げ切りを狙ったパンチャーたちの戦いが見られることだろう。
第3ステージ:メンツィケン〜ベルン(159.3km)
昨年のツール第16ステージもスイスの首都・ベルンにフィニッシュするステージだった。
この第3ステージも恐らく当時と同じフィニッシュのコースレイアウトとなるだろう。
途中、3級山岳を3ヶ所通過するものの、全体としては平坦ステージに分類される。
しかし、残り2kmを切ったところに登坂距離600m・平均勾配6.5%の登りが存在する。
ツールでは登れるスプリンターたちによる集団スプリント勝負となり、ペーター・サガンが制している。
同じように、集団スプリントとなる展開が予想される。
第4ステージ:ベルン〜ヴィラール=シュル=オロン(150.2km)
ベルンから南下していき、エーグル近郊の超級山岳ヴィラール=シュル=オロンの山頂へとフィニッシュする。
途中、1級山岳コル・デ・モスを通過して長いダウンヒルを終えてから、最後の登りが始まる。
ヴィラール=シュル=オロンは、登坂距離10km・平均勾配8.5%と総合順位が大きく入れ替わるであろう強烈なヒルクライムとなっている。
第5ステージ:ベー〜チェヴィオ(222km)
前日のフィニッシュ地点の麓の町、ベーを出発し、アルプス山脈に沿って東へ進んでいく。
100km地点からは、超級山岳シンプロン峠の登りが始まる。
登坂距離20km・平均勾配6.5%の長いヒルクライムだ。
その後は、イタリア国内を通過しつつ、3級山岳が1つあるだけで比較的穏やかなコースとなっている。
超級山岳で脱落したスプリンターたちが、フィニッシュまでの100kmで集団に追いつくことが出来ればスプリント勝負となるだろう。
パンチャー向きのステージとなっている。
第6ステージ:ロカルノ〜ラプント(166.7km)
標高2012mのザン・ベルナルディーノ峠と、標高2315mのアルブラ峠と、2つの超級山岳を登る今大会のクイーンステージだ。
ザン・ベルナルディーノ峠は平均勾配6〜7%の坂道が20km以上続く。
アルブラ峠も平均勾配6〜7%の道が20km以上続く、両者ともにひたすら長い登りとなっている。
アルブラ峠を越えてから、一気に標高600mほど下って、フィニッシュ地点のラプントへと至る。
完全にクライマー向きのステージであり、総合争いもいよいよ佳境へ入る。
第7ステージ:ツェルネッツ〜ゼルデン(160.8km)
スイス南部国境沿いを東へ進んできたプロトン一行は、スイスを飛び出しオーストリアのゼルデンへとフィニッシュするステージを迎える。
フィニッシュ地点の超級山岳ティーフェンバッハフェルナーは、標高2780m地点にある今大会のチーマコッピである。
登坂距離14.2km・平均9.5%にも達するとてつもない登り坂は、本当に調子の良い選手でなければまともに登ることさえ難しいであろう、今大会最難関ヒルクライムだ。
ツール・ド・フランスのクイーンステージに登場するモン・ドゥ・シャの登りに近い登坂距離と勾配であるため、ツールを見据えた選手たちの調子を見極めるのに最も適したステージかもしれない。
第8ステージ:シャフハウゼン〜シャフハウゼン(100km)
スイス最東部を越えた地点から、一気にスイス最北部の街・シャフハウゼンへと移動して、1周12.5kmの周回コースを8周するステージとなっている。
途中3級山岳を8回通過する。
平均勾配は6%程度で、長さは1.6kmほどなので、スプリンターにも問題ない登りだろう。
久々にスプリンターたちに活躍の場が訪れる場となる。
第9ステージ(個人TT):シャフハウゼン〜シャフハウゼン(28.6km)
シャフハウゼンの旧市街地をスタートし、リポ公園へとフィニッシュする個人TTステージで最終決戦を迎える。
途中、登坂距離3.7km・平均勾配5%の登りが登場するものの、やはりTTスペシャリスト系オールラウンダーに有利なコースレイアウトだと言えよう。
第7ステージまでの激しい山岳バトルで失ったタイムを挽回せんと、TTを得意とする総合系選手の逆襲に注目だ。
まとめ
クリテリウム・ドゥ・ドーフィネと並ぶツール前哨戦として名高いレースではあるが、そのコースの厳しさはスイスの方が格段に上回っている。
ツール直前にレースレベルで大きな負荷をかけたトレーニングをしたい選手は、スイスを好んで参戦するものと思われる。
また、ジロ・デ・イタリア明けの総合系選手も多く出場するため、純粋に総合争いがハイレベルな戦いになることも楽しみだ。
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ティーフェンバッハフェルナーやばいっすね・・・。ヨン・イサギレやパンタノ、プールスなど、ツール出場予定のクライマーたちがどれくらいこれをこなせるか、見ものですね。
最終日のレイアウトはやはりデュムラン有利ですかね? そこにデニスがどれだけ喰らいつけるか、ジロでは見れなかった一騎打ちが楽しみです。最後の下りでヨンがやばい下りを見せたら掻っ攫われる可能性もありそうですが(笑)
珠洲さん
スイスは本当に狂ってます…(褒め言葉)。
デュムランはお疲れであることを考慮すると、早々にジロをリタイアしたデニスは万全な状態と思われるのでデニスに期待したくなりますね。
デニスがスイスの超級山岳をどれくらい登れるのか非常に興味があります。
スイスはツールの前哨戦と思わず、普通にステージレースとして見たほうが面白そうな気がしてきました。