1月にサイクルロードレースはシーズンインします。北半球のヨーロッパでは真冬ですが、南半球のオセアニアでは真夏です。
温暖な気候の地で、サイクルロードレースのシーズンが幕明けする流れが、近年は続いています。
その筆頭がオーストラリアで行われるワールドツアーレース”ツアー・ダウンアンダー”です。
ツアー・ダウンアンダーとは、どのようなレースなのでしょうか。
ツアー・ダウンアンダーの歴史
1999年に第1回ツアー・ダウンアンダーが開催されました。開催地は、オーストラリア第5の都市・アデレードです。南緯34度に位置し、1月の気温は40度に達することも珍しくない、灼熱の大地です。
2008年に現在のワールドツアーカテゴリーにあたるプロツアーへと昇格を果たし、ヨーロッパ外では初のプロツアーレースとなりました。
多くの選手がシーズン開幕戦として走ることとなり、世界中からの注目度も高いですが、特にツアー・ダウンアンダーが非常に有名となったきっかけは、2009年のことです。
ランス・アームストロングが4年ぶりの現役復帰レースに、ツアー・ダウンアンダーを選んだからでした。前年と比較して経済効果は2倍以上、集まった報道陣も5倍と、異様な盛り上がりを見せました。
この盛り上がりが一過性のものとならず、2013年にはツアー・ダウンアンダーの本戦を含め、計8日間のイベントへの動員人数は述べ76万人に達しました。
世界的に見ても、屈指の観客動員人数を誇る、オセアニア唯一にして最大のサイクルロードレースイベントとなっています。
本戦とは別に、『ピープルズ・チョイス・クラシック』というオープンレースも行われます。ジャパンカップで言うところの、ジャパンカップ・クリテリウムのような位置づけで、本戦にも出場する選手たちが、1周2.3kmの周回コースを22周して争われます。
ツアー・ダウンアンダーのコースの特徴
例年全6ステージで行われます。シーズン開幕戦であること、オーストラリアの沿岸都市での開催ということもあり、ほとんど平坦基調のコースレイアウトとなっています。
2017年のコースプロフィールを例にとると、第1・3・4・6ステージは、スプリンター向きのコースとなっています。途中、丘陵地帯を走るため、アップダウンは少なくありませんが、ピュアスプリンターでも十分にこなせる難易度の低いアップダウンとなっています。
第2ステージは、軽い山頂フィニッシュのレイアウトです。と言っても、ラスト1.5km地点から100mほど登るだけです。平均勾配は6〜7%と言ったところです。
しかし、第5ステージはステージレースらしい、パンチ力のある登りが登場します。
“ウィランガヒル”という丘へフィニッシュするコースレイアウトは、毎年ツアー・ダウンアンダーの定番にして、例年激しい総合バトルが繰り広げられています。
ラスト3kmで250mほど駆け上がり、平均勾配は8%ほどです。ピュアスプリンターに生き残ることは、なかなか難しくパンチャーやクライマーの見せ場となります。
※2017年のより詳しいコースプロフィールや有力選手情報については、こちらの記事をご覧ください。
ツアー・ダウンアンダーに有利な脚質は?
各ステージのフィニッシュ地点には、ボーナスタイムが設定されています。
そのため、スプリントステージでボーナスタイムを稼いだスプリンターが総合優勝することもあります。過去にはアンドレ・グライペルが2度の総合優勝に輝いています。
最も有利なタイプは、スプリントで上位に絡むことが出来て、短い登りならクライマーに引けを取らないパンチャーたちです。サイモン・ゲランスが最多の4度の総合優勝を果たしています。
クライマー、オールラウンダーはなかなか総合優勝が出来ず、過去にはルイスレオン・サンチェスが1度総合優勝を果たしたことがありますが、スプリンターとパンチャーの陰に隠れがちです。
ウィランガヒルでは、やはりクライマーが強く、特にリッチー・ポートは2014年からウィランガヒルのステージを3連覇しています。しかし、総合優勝には届いていません。
また、もう一つ重要な点は、ツアー・ダウンアンダー開催の1週間前に、オーストラリア国内選手権が行われることです。
オーストラリア人選手たちはナショナルチャンピオンを目指して、トップコンディションに仕上げている場合が多いため、母国開催というアドバンテージと合わせて、コンディションも良いため非常に有利となっています。
2016年までに開催18回中11回はオーストラリア人が総合優勝を果たしています。
大勢の観客にあふれたシーズン開幕戦は必見
新しいチームジャージのお披露目の場にもなりますし、新シーズンの開幕戦ということで、非常に注目度の高いレースです。
観客動員も伴い、走る選手たちにとっても盛り上がるレースは嬉しいことでしょう。
2017年は1月16日に”ピープルズ・チョイス・クラシック”が開催され、1月17〜22日までの6日間で本戦のステージレースが行われます。
注目です!
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