ピエール・ラトゥール(フランス、AG2R)が、根性・がむしゃらな走りでステージ優勝しました。
ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)が、クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)の攻撃を凌いで、マイヨロホを確定させました。
コースプロフィール
レース直後から山岳賞をめぐる、フライレとエリッソンドの争い
山岳ポイント56ptsでトップのケニー・エリッソンド(フランス、FDJ)に次ぐ、53ptsで2位のオマール・フライレ(スペイン、ディメンションデータ)の山岳賞をめぐる戦いが始まりました。
177km地点で、メイン集団からフライレがアタックをすると、その背後にピタリとエリッソンドがマークします。
このアタックをキッカケに逃げ集団が形成されます。
ちょっと、逃げ集団がゆるんだ隙に、エリッソンドがアタックを仕掛けます。
一気に20秒近いリードを築きますが、後方からフライレを含む4名がエリッソンドを追走し始めます。
2級山岳の頂上付近で、エリッソンドを捉えます。
エリッソンドは、力の限りを尽くしたアタックだったようで、この集団に喰らいつくどころか、後方の追走集団にもついていけずに、一気にメイン集団まで落ちてしまいました。
その隙に、フライレが2級山岳を先頭通過して、58ptsとして、暫定で山岳賞首位に立ちました。
フライレと共に、追走に協力してくれたスペイン人のペーリョ・ビルバオ(カハ・ルラル)と軽く健闘を称えあい、そのまま逃げ続けます。
チームスカイとティンコフがレースを動かす
最初の2級山岳の下りで、チームスカイが仕掛けます。
ミカエル・ゴラス(ポーランド、チームスカイ)が全力で牽き始めて、後方のメイン集団との差をつけにかかります。
この動きには、ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)、エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・バイクエクスチェンジ)はしっかりと反応しますが、アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)は遅れてしまいます。
ティンコフはアシストを使って、この小集団を追いかけます。
ゴラス1人での牽引だったので、ティンコフが牽く集団を離すには至らず、事なきを得ます。
その後も、集団が落ち着くとチームスカイやティンコフの選手がアタックを仕掛け、その度にモビスターが追いかけるという展開が続きます。
そのため、逃げ集団は1分以上リードを築くことが出来ず、吸収とアタックを繰り返す混戦模様を呈します。
その中で、ルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)とルディ・モラール(フランス、コフィディス)の2人が逃げ集団から抜け出すことに成功します。
相変わらず追走集団は吸収されたり、されなかったりで落ち着きませんが、3つ目の2級山岳の登りでようやく落ち着きを見せます。
ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)
ユーリ・トロフィモフ(ロシア、ティンコフ)
ダビ・ロペスガルシア(スペイン、チームスカイ)
ダルウィン・アタプマ(コロンビア、BMCレーシング)
ロベルト・ヘーシンク(オランダ、ロットNLユンボ)
ダミアン・ホーゾン(オーストラリア、オリカ・バイクエクスチェンジ)
ファビオ・フェリーネ(イタリア、トレック・セガフレード)
ピエール・ラトゥール(フランス、AG2R)
パヴェル・コシェトコフ(ロシア、カチューシャ)
バルト・デクレルク(ベルギー、ロット・ソウダル)
ベンジャミン・キング(アメリカ、キャノンデール)
マティアス・フランク(スイス、IAMサイクリング)
クレメン・シェブリエ(フランス、IAMサイクリング)
ヴァレリオ・コンティ(イタリア、ランプレ・メリダ)
リリアン・カルメジャーヌ(フランス、ディレクトエネルジー)
の15名です。
メイン集団率いるモビスターが、逃げを容認し、集団のスピードが緩んだ隙をついて、山岳賞ランキング暫定2位のケニー・エリッソンドがメイン集団からアタックを決めます!
もはや力尽きたと思われていたエリッソンドが、集団内で息を潜め、フライレのいない追走集団へのブリッジを試みます。
しかし、2級山岳の頂上までに追いつくことは出来なかったようで、ポイント獲得とはなりませんでした。2級山岳の下りで追走集団への合流を目指します。
このダウンヒルで、ホセホアキン・ロハスが落車してしまいます。
全く動けないほどの大きなダメージを負ってしまったようで、残念ながらリタイアとなりました。
頭部への影響は無かったようですが、左脚に大きな怪我を負ってしまったようです…。
モビスターとしても、平坦のみならず山岳部でも強烈な牽引を見せていた貴重なアシスト選手を失ってしまったことは痛手です。
エリッソンドが山岳賞獲得を目指して、必死の追撃
残る山岳ポイントは、2級山岳一つと頂上ゴールとなっている超級山岳一つです。
エリッソンドがフライレを逆転するためには、
– 2分先を走るルイスレオン・サンチェスとモラールに追いつき、2級山岳を2位以上で通過する
– 追走集団の先頭で、2級山岳を3位通過して、頂上ゴールで5位までに入る
– 頂上ゴールで4位までに入る
という3パターンです。
エリッソンドは頂上ゴールを5番手以内でフィニッシュする自信はないようで、2級山岳の頂上までに先頭に追いつかんと必死で追走集団の先頭を走ります。
ルイスレオン・サンチェスとモラールも、ステージ優勝を狙っているので、簡単に追いつかせるわけには行きません。
タイム差を20秒ほど縮めましたが、先行する2名には追いつけず、追走集団内の先頭で、2級山岳を3位で通過して1pt獲得しました。
一方でメイン集団では、オリカ・バイクエクスチェンジが集団牽引を担い、猛烈なスピードで2級山岳を登ります。
14分程度あったタイム差が、一気に9分近くまで縮まります。
オリカはティンコフのアシスト陣を削り取る目的で、ペースアップをしました。
ティンコフのアシストをあらかた削った状態で、エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・バイクエクスチェンジ)がアタックします!
チャベスを逃がすわけにはいかない、コンタドールは自ら集団を牽いて追いかけます。
チャベスはメイン集団から20秒ほどのリードを持って、長いダウンヒルへ突入します。
チームスカイが攻撃開始!?オリカ得意の前待ち作戦発動
山頂でレオポルド・ケーニッヒ(チェコ、チームスカイ)がフルームを引き連れ、アタックを仕掛けようとします。
しかし、同じ轍は踏まないと、モビスター勢は完全に抑えこみます。
チームスカイは何も出来ないまま、ダウンヒルをこなして行きます。
一方で、先行するチャベスはコンタドールとの差をどんどん開いて行きます。
途中で、逃げていたダミアン・ホーゾンと合流し、チャベスを超級山岳の入り口まで運びます。チャベスはホーゾンに牽かれながら、最後の山岳を登るための脚をためます。
コンタドールは単騎で、為す術がない状態で、いよいよタイム差は2分ほどまで広がりました。
少し遅れて、逃げ集団からユーリ・トロフィモフが降りてきて、コンタドールのためにメイン集団を牽引する動きを見せます。
ところが、差を詰めるどころか逆に開いてしまいます。それくらい、ホーゾンの牽きが素晴らしいようです。
いよいよ、最終決戦の地、超級山岳アルト・デ・アイタナの登りに入ります。
超級山岳での決戦
ホーゾンが持てる全ての力を出し尽くさんと、全開の牽きでチャベスをアシストします。
少し登ったところで、ホーゾンは燃え尽きました。
漢の中の漢と言うべき、渾身のアシストで、全ては逆転で表彰台を獲得するために、エースのチャベスに全てを託します!
仲間の想いを受け取ったチャベスは、ホーゾンに声かけることもなく、振り返ることもなく、加速して頂上を目指します。全ては結果で応えるのみです。
先頭では、ルイスレオン・サンチェスがアタックします。一緒に逃げていたモラールはついていくことが出来ません。
ルイスレオン・サンチェスの後方からは、コンティが単独で追いますが、なかなか差を詰めていくことが出来ません。
更に後方からアタプマ、ラトゥール、マティアス・フランクが猛追します。コンティをかわし、さらにルイスレオン・サンチェスも視界に捉えて、先頭に出ます。
アタプマが、ラトゥールとマティアス・フランクに対して、わずかなリードを保ちつつ登っていきます。
残り2.4km地点で、アタプマに追いつくと、ラトゥールがアタックを仕掛け、アタプマは対応しますが、マティアス・フランクは遅れを喫します。
ラトゥールとアタプマがお互いにアタックをしかけ合う、根性合戦の様相を呈してきました。
残り500mで、アタプマが加速します。ラトゥールは反応が遅れ、差が開いてしまいます。
アタプマでステージ優勝が決まりかと思いきや、ラトゥールが残り200mで追いつくとそのままアタプマをパスして、全力でもがきながらゴールを目指します。
ラトゥール渾身のアタックに、アタプマはついていくことが出来ず、そのままラトゥールがフィニッシュ!
22歳の新鋭レーサーがグランツール初勝利をあげました!
3位には、フェリーネが入り込みます。ずっと狙っていたステージ優勝には届きませんでしたが、ポイント賞が獲得することに成功します。
チャベスvsコンタドールの行方についてですが、コンタドールがいるメイン集団はユーリ・トロフィモフが牽引しています。
トロフィモフにトドメを刺さんと、サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ)がアタックで揺さぶりをかけます。
イェーツまで逃がしてはならないので、トロフィモフが力を使ってこれを追います。そのような揺さぶりを繰り返すうちに、トロフィモフは力尽きてしまい、コンタドールは完全に孤立してしまいました。
トロフィモフに代わって、バルベルデが先頭で牽き始めます。フルームのアタックを許さんとばかりに、堂々たる牽引です。
残り5kmを切ってきたところで、レオポルド・ケーニッヒがペースアップします。
この動きで、集団は完全に崩壊し、ケーニッヒの後ろにはフルームとキンタナとジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、エティックス・クイックステップ)のみとなり、コンタドールはまたしても遅れてしまいます。
コンタドールはここから、単独で頂上を目指します。
チャベスとのリード1分11秒、つまりチャベスから1分11秒以内の遅れに留める必要がありますが、すでに2分近く離されている状態です。
この大ピンチの時でも、コンタドールは地元スペイン人の猛烈な声援を受け、差を詰めて行きます。
まずはチャベスがラトゥールから3分17秒遅れでフィニッシュします。
全力でもがくしか策はないコンタドールは、2分近くあった差をかなり挽回しますが、惜しくも4分41秒遅れでフィニッシュ。
チャベスから13秒遅れの4位となってしまいました。
またしても、オリカ・バイクエクスチェンジのアシスト陣フル動員しての大作戦が結実し、逆転で総合3位を獲得することに成功しました!
さて、レオポルド・ケーニッヒのペースアップによって抜け出したフルームがキンタナに攻撃を仕掛けます。
前待ちしていたダビ・ロペスガルシアもフルームのための牽引を見せますが、キンタナはびくともしません。
残り4kmを切り、お互いに単騎で、まさに一騎打ち状態となります。
フルームは何度もアタックを仕掛けますが、キンタナは軽々と背後にピタリと付きます。
何度やっても同じ結果で、もはやフルームの総合優勝・ダブルツールの夢は実質的に絶たれたとしても、何度もアタックを仕掛けます。
フルームが本来持つファイターとしての闘争心をむき出しで、得意のペース走行など無視したアタック合戦です。
残り500mを切った、最後の登りでフルームは下ハンドルを握ります。
ラストスプリントで勝負を挑もうとした刹那、キンタナがサドルから腰を上げ、全開のスプリントを開始します。
キンタナに幾度となくアタックを仕掛けたフルームに、もはや対抗する力は残っていませんでした。
ただキンタナを見送ることしか出来ず、その圧倒的な強さに感服したフルームは、最強のライバルを称える拍手をしながらフィニッシュします。
これにて、2016年のブエルタ・ア・エスパーニャは決着がつきました。
ナイロ・キンタナが初のブエルタ制覇を成し遂げました!
ポイント賞、山岳賞ジャージが移動
ラトゥールは今シーズン初勝利が、グランツールでの初勝利になりました。
フィニッシュ地点が、スペインの軍事施設であるためか、ミリタリーな帽子がプレゼントされていました。
キンタナも茶目っ気たっぷりに敬礼して、ファンの声援に応えます。
そして、この日は特別にスペイン空軍による編隊飛行も行われていました。
敢闘賞はルイスレオン・サンチェスでした。
アスタナは、ツールに引き続き未勝利となりそうですが、最後に何とか一矢報いる結果を残せたと言えましょう。
ポイント賞はフェリーネが獲得しました。
しかし、このジャージはまだ確定ではありません。明日の最終ステージでの中間スプリント、ラストのマドリード周回コースへのゴールと、ポイントを獲得するチャンスはあります。
バルベルデとフェリーネのどちらがマイヨ・プントスを獲得するのでしょうか。
山岳賞はオマール・フライレで確定しました。2年連続での受賞ですが、2位のエリッソンドとは、わずかに1pt差でした。
最終第21ステージはマドリードへとフィニッシュする平坦コース
マイヨプントスをめぐって、フェリーネとバルベルデの対決が大きな見どころとなります。
そして、3週間にわたる長丁場のブエルタで、厳しい山岳ステージを生き残ったスプリンターたちによるスプリント勝負を経て、2016年のグランツール最終戦に幕が降ろされます。
有終の美を飾る選手は誰なのか、注目です。
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