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戦力分析2018

クイックステップ・フロアーズ戦力分析!【2018年シーズン】

マルセル・キッテル、マッテーオ・トレンティンという2人の勝ち頭に加えて、総合上位を狙えるダニエル・マーティンが移籍したクイックステップ・フロアーズ。

大幅戦力ダウンを免れないと思いきや、ボブ・ユンゲルス、ジュリアン・アラフィリップ、フェルナンド・ガヴィリアを中心に若手とベテランが融合したバランスの良いチームを維持している。

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クイックステップ・フロアーズ2018ロースター

ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク)
ジュリアン・アラフィリップ(フランス)
フェルナンド・ガヴィリア(コロンビア)
フィリップ・ジルベール(ベルギー)
エロス・カペッキ(イタリア)
レミ・カヴァーニャ(フランス)
ローレンス・デプルス(ベルギー)
ティム・デクレルク(ベルギー)
ドリス・デヴェナインス(ベルギー)イーリョ・ケイセ(ベルギー)
イヴ・ランパールト(ベルギー)
ダヴィデ・マルティネッリ(イタリア)
エンリク・マス(スペイン)
マクシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン)
ファビオ・サバティーニ(イタリア)
マクシミリアン・シャッハマン(ドイツ)
ピーター・セリー(ベルギー)
ゼネク・スティバル(チェコ)
ニキ・テルプストラ(オランダ)
ペトル・ヴァコッチ(チェコ)

・新加入選手
ミカエル・モロコフ(デンマーク)←カチューシャ・アルペシン
エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア)←チームスカイ
フロリアン・セネシャル(フランス)←コフィディス(PCT、フランス)
アルバロホセ・ホデグ(コロンビア)←コルデポルテス・クラロ(CT、コロンビア)※トレーニーから昇格
ファビオ・ヤコブセン(オランダ)←SEG・レーシングアカデミー(CT、オランダ)
ジェームス・ノックス(イギリス)←チーム・ウィギンス(CT、イギリス)
ホナタン・ナルヴァエズ(エクアドル)←アクシオン・ハーゲンズ・ベルマン(CT、アメリカ)

・退団選手
ジャック・バウアー(ニュージーランド)→オリカ・スコット
ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア)→トレック・セガフレード
ダビ・デラクルス(スペイン)→チームスカイ
マルセル・キッテル(ドイツ)→カチューシャ・アルペシン
ダニエル・マーティン(アイルランド)→UAE・チームエミレーツ
マッテーオ・トレンティン(イタリア)→オリカ・スコット
ジュリアン・ヴェルモト(ベルギー)→ディメンションデータ
プシェミスラウ・カスペルキーウィッツ(ポーランド)※トレーニー→デルコ・マルセイユ・プロヴァンス・KTM(PCT、フランス)
マルティン・ヴェリトス(スロバキア)→引退
トム・ボーネン(ベルギー)→引退

総合エースのユンゲルスの未来を見越した布陣

ダニエル・マーティン、ダビ・デラクルスが移籍したことにより、総合エースはユンゲルスに託されることになる。チームとは2020年まで契約延長しており、今後はユンゲルスを中心としたチームとなっていくだろう。

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ジロ・デ・イタリアでは、2016年総合6位、2017年総合8位で2年連続新人賞ジャージを獲得しており、相性の良いレースとなっている。

身長189cmの大柄な体格を活かしたパワフルな走りが魅力の一つで、特にタイムトライアルを得意としている。しかし、上りでは耐えきれずに大きく遅れをとってしまうことも多く、総合優勝を狙うためにも登坂力強化が課題だ。

だが、ユンゲルスならその課題もそう遠くない未来に解決してくれるのではないかと期待している。なぜなら、同じようにTTスペシャリスト系のトム・デュムラン、ゲラント・トーマスが総合狙いに切り替えてすぐに結果を出しているからだ。ましてやユンゲルスは25歳と非常に若い。

クイックステップは、前身のマペイ時代を含めてもグランツールウィナーを輩出したことがない。ユンゲルスはチーム史上初のグランツール王者になる素質は十分あるからこそ、チームとして未来のクライマーに投資をしたのだ。

22歳のデプルスはジロ総合24位で完走しており、同じく22歳のマスはブエルタ・ア・ブルゴスで総合2位となり、ブエルタ・ア・エスパーニャ第20ステージの超級山岳アングリルではアルベルト・コンタドールをステージ優勝に導く走りを見せていた。

加えて、U-23リエージュ~バストーニュ~リエージュ2位、ツール・ド・ラヴニール総合8位の22歳のノックスと、シルキュイ・ド・アルデンヌ総合優勝の20歳のナルヴァエスを獲得した。来たるべくユンゲルスの黄金時代を支える未来のクライマーたちも控えている。

世界屈指のアタッカー集団

伝統的にワンデーレースに強いチームであり、ワンデークラシック銀河系軍団といえる巨大な戦力を有している。

その中でも、今後チームの中核になるべき選手はアラフィリップだ。パリ〜ニースの個人TTステージで勝利し、新人賞とポイント賞を同時に獲得する史上初の快挙を成し遂げ、ミラノ〜サンレモでは3位。ブエルタ・アル・パイス・バスコでは落車の影響もあり途中リタイア。この際に膝を痛めてしまい、長期離脱を経験する。狙っていたアルデンヌクラシックとツール・ド・フランスの欠場を余儀なくされた。

怪我から復帰後は、ブエルタに出場し第8ステージで勝利を飾った。世界選では絶妙なタイミングでアタックを決め独走に持ち込んだものの10位。イル・ロンバルディア2位、ツアー・オブ・グアンシー総合4位&新人賞という成績を収めた。

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コンディションの良いアラフィリップは、あらゆるレースで結果を残すことができる。

2018年は移籍したダニエル・マーティンの代わりに、アルデンヌクラシックでエースを担うことになるだろう。無名だった頃のアラフィリップが名を上げたレースでもある、フレーシュ・ワロンヌとリエージュ~バストーニュ~リエージュで勝利を狙う。

北のクラシックでは、引退したボーネンに代わりスティバルがエースを担う機会が増えるだろう。まだ北のクラシックでの勝利経験はない。グレッグ・ヴァンアーヴェルマートと激闘の末にパリ〜ルーベ2位になったように、勝機は十分にあるだろう。

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そして、北のクラシック、アルデンヌクラシックを含めてチームの精神的主柱がジルベールだ。念願のロンド・ファン・フラーンデレンで優勝、アムステルゴールドレースでも勝利を飾ったジルベールが、エースとしての走りだけでなく、時にはアシストに徹する走りを見せてくれる。自身で勝利を狙いつつ、チームが勝つために何をすべきか教えてくれる、まさにチームのキャプテン的存在だといえよう。

もう一人チームに欠かすことのできない名アシストであるテルプストラも控えている。ベテランらしい巧みな状況判断が素晴らしく、チームの勝利に幾度となく貢献している。

26歳のランパールトは、ドワルス・ドール・フラーンデレンでジルベールとの絶妙な連携を見せて勝利を飾った。ボーネンが引退した今、次代をエースを担うべき人材だといえよう。

ケイセ、デクレルク、新加入のモロコフは北のクラシックのアシストを務め、セネシャルはドワルス・ドール・フラーンデレン10位、パリ〜ルーベ12位と同じく北のクラシックで結果を残している選手だ。

ヴァコッチ、デヴェナインスはアルデンヌクラシックを得意としている選手だ。ヴァコッチはアラフィリップのように、がむしゃらなアタックが持ち味の選手で、そろそろワンデーレースでの勝利が欲しいところだ。

カヴァーニャ、セリーはステージレースでの逃げを得意としており、2017年はアルデンヌクラシックシリーズには出場しなかったが、十分にアシストをこなせるものと思われる。

ブランビッラ、ダニエル・マーティン、バウアーらが抜けた穴は小さくないが、現有戦力で十分にカバーできているだろう。ただし、ヴェルモトが抜けた穴はあまりにも大きく、代わりの選手の台頭が待たれる状況だ。

キッテル移籍で、ガヴィリア中心のスプリンターチームへ

2017年はチーム最多の14勝をあげたキッテルと7勝をあげたトレンティンの移籍により、大幅な戦力低下を招いている。同じく14勝をあげたガヴィリアが名実ともにチームのエースとなるわけだが、1人で35勝をあげることはさすがに厳しい。

プロ2年目だったガヴィリアは、ジロデイタリア4勝、ツアー・オブ・グアンシー4勝とワールドツアーの舞台で勝ちまくった。

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いまやキッテルと肩を並べる2大スプリンターだと言っても過言ではない。ところが、2017年はキッテルと一度も同じレースを走っていない。

2018年シーズンは、ガヴィリアとキッテルの直接対決が見られるだろう。

そして、キッテルの穴を埋めるべく、チームスカイからヴィヴィアーニを獲得した。2016年はわずか2勝に終わり、2017年もシーズン序盤は2位ばかりであったが、4月のツール・ド・ロマンディで1年以上ぶりのステージ勝利をあげると、8月はサイクラシックス・ハンブルグからブルターニュクラシック・ウエストフランスにかけて、1週間で4勝をあげる爆発的な活躍を見せた。

シーズンが終わってみれば、年間9勝をあげており、ヴィヴィアーニ自身プロ入り後最多年間勝利数となった。そう、彼は今が一番脂の乗った時期なのだ。

キッテルの穴を完全に埋めることは難しいかもしれないが、大小問わず様々なレースで勝ち星をあげてくれるだろうという期待の持てる選手だ。

2人のエーススプリンターを支えるアシスト陣も非常に豪華になっている。

まずは最終リードアウトを務める、リケーゼとサバティーニの存在だ。

リケーゼはガヴィリア専属のリードアウトを務めていた。ガヴィリアがあげた14勝のうち13勝をあげたレースで共に走っている。南米人コンビは2018年も続行だ。

一方でサバティーニは、キッテルの相棒を務める機会が多かった。同じイタリア人コンビとして、ヴィヴィアーニと共に走る機会が増えることだろう。チームスカイ時代は、ほとんどアシストなしでスプリントをしていたが、世界最高クラスのリードアウトを手にしたことで、よりスプリントしやすくなることだろう。

さらにリードアウト要員としては、ランパールト、マルティネッリも担当できる。ランパールトはトレンティンのように、自らエースとして勝利を狙う機会も増えることだろう。

この発射台につなげるトレイン陣も豪華メンバーが揃っている。アラフィリップ、ジルベール、ユンゲルスらエース格の選手たちもクイックステップでは積極的にリードアウトトレインを形成している。

さらにケイセ、シャッハマン、カヴァーニャ、テルプストラ、モロコフもゴリゴリのルーラーとして集団を牽き倒してくれるだろう。

ネオプロのホデグとヤコブセンもスプリント力の高い選手であるため、リードアウトに参加して経験を積む機会も増えるかもしれない。

キッテル、トレンティンの離脱は痛いが、優秀すぎるリードアウト陣をもってすれば大きく勝利数が減ることはないのではないかと思う。

再び年間50勝を十分に狙える布陣

グランツール:★★★☆☆
北のクラシック系:★★★★☆
アルデンヌクラシック系:★★★★★
スプリント:★★★★★

勝ち頭のキッテル、トレンティンが移籍したことによる大幅戦力ダウンは避けられないかと思いきや、伸び盛りの若手陣の突き上げが期待できることと全盛期を迎えつつあるヴィヴィアーニの獲得により、連続年間50勝を十分狙える布陣に見える。

そのためには、ユンゲルス、アラフィリップ、ガヴィリア、ランパールト、ヴィヴィアーニは2017年以上に勝ち星を伸ばす必要があるだろう。

一方でヴェルモトという替えが効かない唯一無二の選手を失ったことが、あまりにも痛い。序盤・中盤の集団コントロールはヴェルモト1人に任せておけば良かったが、これからは複数の選手で代わる代わる担当せねばならないだろう。そうして積み重なる疲労が、選手のパフォーマンスに負の影響を及ぼしかねない。

仮に年間50勝に届かなかったとしても悲観する必要はない。多くの若手を獲得したことから、数年先を見据えた過渡期にあると思われるからだ。一方でベテラン選手の多くと契約延長している。育成と勝利の両輪を回すべく、若手とベテランが融合したチームワークが2018年のクイックステップ・フロアーズの最大の注目ポイントとなるだろう。

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