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戦力分析2018

EFエデュケーションファースト・ドラパック戦力分析!【2018年シーズン】

2018/02/01

スポンサー問題でチーム存続の危機に立たされていたキャノンデール・ドラパック改め、EFエデュケーションファースト・ドラパック。

ツール・ド・フランス総合2位のリゴベルト・ウランを中心に、チームの立て直しを図る。

※EFエデュケーションファースト社から、写真を提供していただきました!

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EFエデュケーションファースト・ドラパック2018ロースター

リゴベルト・ウラン(コロンビア)
マイケル・ウッズ(カナダ)
セップ・ヴァンマルク(ベルギー)
ピエール・ロラン(フランス)
ネイサン・ブラウン(アメリカ)
ブレンダン・カンティ(オーストラリア)
ヒュー・カーシー(イギリス)
ウィリアム・クラーク(オーストラリア)
サイモン・クラーク(オーストラリア)
ローソン・クラドック(アメリカ)
ジョセフロイド・ドンブロウスキー(アメリカ)
アレックス・ハウズ(アメリカ)
セバスティアン・ラングフェルド(オランダ)
テイラー・フィニー(アメリカ)
トーマス・スクーリー(ニュージーランド)
トム・ヴァンアスブロック(ベルギー)

・新加入選手

マッティ・ブレシェル(デンマーク)←アスタナ
ダニエル・モレーノ(スペイン)←モビスター
サーシャ・モードロ(イタリア)←UAEチーム・エミレーツ
ミッチェル・ドッカー(オーストラリア)←オリカ・スコット
ダニエル・マクレー(イギリス)←フォルトゥネオ・オスカロ(PCT、フランス)
ダニエル・マルティネス(コロンビア)←ウィリエール・トリエスティーナ(PCT、イタリア)
ジュリアン・カルドナ(コロンビア)←メデリン・インデル(CT、コロンビア)
ローガン・オーウェン(アメリカ)←アクセオン・ハーゲンスベルマン(CT、アメリカ)
キム・マグヌソン(スウェーデン)←チームトレベルグ・ポストノルド(CT、スウェーデン)

・退団選手

トムイェルト・スラフテル(オランダ)→ディメンションデータ
ディラン・ファンバーレ(オランダ)→チームスカイ
クリスティアン・コレン(スロベニア)→バーレーン・メリダ
ダヴィデ・フォルモロ(イタリア)→ボーラ・ハンスグローエ
ダヴィデ・ヴィレッラ(イタリア)→アスタナ
アルベルト・ベッティオール(イタリア)→BMCレーシング
パトリック・べヴィン(ニュージーランド)→BMCレーシング
トームス・スクインシュ(ラトビア)→トレック・セガフレード
ライアン・ミューレン(アイルランド)→トレック・セガフレード
ワウテル・ウィッペルト(オランダ)→ルームポット・ネーデルランセローテライ(PCT、オランダ)
アンドリュー・タランスキー(アメリカ)→引退

チームの大黒柱であるウランと、急成長を見せているウッズ

「ウランが移籍していたら、チーム存続はなかった」とゼネラルマネジャーのジョナサン・ヴォーターズが語っているように、スポンサー撤退問題でチーム存続の危機に陥っていたチームにとって、ツール・ド・フランス総合2位の看板選手を失うことはチームの死を意味していた。

だが、チームへの恩義を感じていたのだろうか、ウランはチームに対して二週間の猶予を設けた。その間に、ヴォーターズは見事にEFエデュケーションファースト社とのスポンサー契約締結にこぎつけた。かくして、ウランは改めてチームへの残留を決めたのだった。

しかし、スポンサー問題が片付くまでの間に、主力選手の多くはチームを去る決断をした。チームから他のワールドチームへの移籍を決めた選手は9名。最も多くの選手がワールドチームに移籍したチームとなってしまった。一方でワールドチームからの選手獲得は4名に留まり、チーム戦力は大幅ダウンとなっている。

なお、EFエデュケーションファースト社は世界116カ国で語学学校や留学事業、大学などを展開する世界最大級の私立教育機関だ。日本との関わりでは、東京五輪の公式スポンサーも務めていて、国内向けにオンライン英会話のEF English Liveも展開している。

語学習得を扱うEFエデュケーションファースト社にとっては、世界中を転戦するサイクルロードレース関係者や、世界に点在するサイクルロードレースファンに訴求できることで、大きな広告効果を望めるはずだ。どれだけチームの名前を世界に知らしめることができるかが重要となってくるだろう。

EFエデュケーションファースト社とのスポンサー契約は2020年までの3年間だ。この3年の間に、本チームに継続して出資する価値を見出せるような結果を残さねば、再びスポンサー問題が巻き起こるだろう。

現在、出資するに値する価値を生み出せる選手はウランただ一人のみだといえよう。スポンサーにとっては、世界最大のスポーツイベントであるツール・ド・フランスでどれだけ活躍できるかどうかが全てといっても過言ではないからだ。

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ということで、ウランはもちろん2018年もツールを狙う。さらには、ブエルタ・ア・エスパーニャへの連戦も計画している。ウランのツールでの成績はチームの未来に直結するだろう。

ウランに次いで総合エースとして期待がかかるのはウッズだ。ブエルタではグランツール自己最高の総合7位でフィニッシュした。難関山岳ステージでは、クリス・フルームを上回るような登坂力も見せており、2度目のグランツール出場で総合ライダーとしての素質が大きく花開いた。

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31歳ながらまだまだ発展途上にあるウッズは、2018年はジロ・デ・イタリアへの出場を予定している。また、フレーシュ・ワロンヌ11位、リエージュ~バストーニュ~リエージュ9位とアルデンヌクラシックへの高い適性も見せており、ワンデーレースでの活躍も期待できる。

ウランへの依存度の高さを解消するためには、ウッズに更に一花咲かせてほしいところだ。

大量流出で戦力ダウンとなったものの、最低限のアシスト陣は維持

山岳アシストとしてダニエル・モレーノを獲得した。ブエルタでは総合トップ10圏内に5度入ったことがあるベテランクライマーだ。2016年ブエルタでは総合優勝したナイロ・キンタナの山岳アシストとして大活躍していた。

ブエルタの選手というイメージが強いが、やはりツールでウランをサポートするために起用したいところだ。2013年にフレーシュ・ワロンヌで勝ったこともある選手で、アルデンヌクラシック系レースでもチームに貢献できる選手だろう。

2015年ツアー・オブ・ユタで総合優勝したドンブロウスキーも登坂力に優れた選手のはずだ。しかし、以降目立った戦績は残せていない。2017年ツール・ド・スイス第7ステージの標高2780m地点にフィニッシュするクイーンステージでは3位に入る快走を見せたものの、ブエルタでは全く存在感を示すことができなかった。

まだ26歳と若い選手なのでこれからに期待したいものの、伸び悩んでいる印象は拭い去れず、やや心配な選手である。

カーシーのワールドツアー1年目は、ハイレベルな戦いに苦しんだ印象を受ける。2014年にツアー・オブ・ジャパン(2.1)で山岳賞と新人賞を獲得し、細身の長身でイギリス人であることから「フルーム二世」と称されることもあるが、まだ大器の片鱗を見せるには至っていない。


EFエデュケーションファースト社のロンドンオフィスを訪れたヒュー・カーシー(右)※画像提供:EF Education First

だが、カーシーが物になってくれないとチームとしては困るだろう。貴重な山岳系の選手として、真価が問われるワールドツアー2年目のシーズンを迎える。

もう一人、新加入のマルティネスには大きな期待を寄せている。シーズン終盤のトレ・ヴァーリ・ヴァレシーネ9位、ミラノ〜トリノ7位と多くのワールドチームが参加するワンデーレースで一桁順位を連発した。どちらもプロコンの選手としては最高順位だった。

さらにツアー・オブ・ターキーでは総合4位に入り、新人賞を獲得している。本格的なクライマーというよりは、パンチャー的な脚質なのかもしれないが、それ以上に現在21歳という若さに魅力を感じるのだ。コロンビア出身ということもあり、偉大な先輩であるウランの薫陶を受け、総合系選手へ大きく成長することを期待したい。

将来有望なクライマーがロースターに名を連ねているものの、2017年シーズンと比較すると、ツアー・オブ・カリフォルニア総合3位のタランスキーが引退し、2016年ブエルタ総合9位、2017年ジロ総合10位のフォルモロが移籍し、2016年ジャパンカップ優勝、2017年ブエルタ山岳賞のヴィレッラも移籍しており、山岳での総合力は大きく低下している。とはいえ、最低限の戦力は揃っているといえよう。

移籍2年目のヴァンマルクに期待

北のクラシックでのエースはヴァンマルクが務めるだろう。移籍1年目はツアー・オブ・オーストリア(2.1)でポイント賞を獲得し、WTポイントではチーム2位の917ptsを獲得している。しかし、ロンド・ファン・フラーデレンで落車して骨折した影響で、狙っていたパリ〜ルーベに出場できなかったなど、一年を通じて未勝利に終わったことで不完全燃焼となった印象が残ってしまう。

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なかなか勝ち星に恵まれない選手で、未だワールドツアーでの勝利もない。それでも、これだけの知名度と実績を積んできているわけで、潜在能力は高いだろう。

ウランやロランが移籍2年目に大きく結果を出したように、ヴァンマルクも移籍2年目の2018年シーズンの飛躍に期待したい。

2017年シーズンはエース格だったファンバーレが移籍し、アシスト要員だったベッティオール、ミューレンもチームを離れた。そこで、ドッカーとブレシェルを獲得し、大幅な戦力ダウンを回避した。ラングフェルド、ヴァンアスブロックも加えて、ヴァンマルクのアシスト要員は十分揃っているといえよう。


※画像提供:EF Education First

アルデンヌクラシック系では核となる選手は不在だ。ウッズ、ウラン、ダニエル・モレーノあたりを中心に、上位入賞は狙えるだろう。ウランはイル・ロンバルディアで3度3位に入った経験があり、2017年シーズンはミラノ〜トリノ(1.HC)で勝利している。

スプリンター獲得により、ステージ優勝を狙う機会が増加

モードロ、マクレーの2人のスプリンターを補強したことで、スプリントを狙えるチームとなった。実績面ではエーススプリンターはモードロで、セカンドエースまたは最終発射台としてマクレーを起用するものと思われる。

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他にもリードアウトはヴァンアスブロック、フィニー、スクーリー、ハウズらが担当するだろう。

ハウズは2011年以来チーム一筋であり実質的な生え抜き選手だ。ツアー・オブ・アルバータ第3ステージで500mのロングスプリントを決めて勝利した。スクーリーはルート・デュ・スッド(2.1)第4ステージで逃げ切った上に少人数でのスプリントを制している。

また、新加入でネオプロのオーウェンはボルタ・アオ・アレテンホ(2.1)第4ステージの上りスプリントで、カルロス・バルベロ(スペイン、モビスター)を抑えて勝利している。2016年にはU-23リエージュ~バストーニュ~リエージュでも優勝しているため、発射台にとどまらずアタッカーとしても楽しみな逸材である。

平坦路を牽引するルーラーとしてはクラドック、カンティ、ドッカーに加えて、U-23コロンビア国内TT王者のカルドナも控えている。カルドナの実力は未知数ではあるが。

そして、逃げを得意とするアタッカー陣の陣容も厚い。

ジロ第17ステージで逃げ集団から、独走に持ち込んで勝利したロランは、もはや逃げのスペシャリストに進化したといっても過言ではない。

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とにかく逃げに乗ることを非常に得意としており、平坦路の独走力が意外に高いことを示し、上りにも強い。2018年シーズンもステージレースを中心に、勝利を狙うだろう。

ハウズは、ブエルタ・アル・パイスバスコで山岳賞を獲得し、コロラド・クラシック(2.HC)第2ステージで逃げ切り勝利を飾っている。

サイモン・クラークも逃げに乗ることがうまく、小集団から独走に持ち込もうとアタックをかけるシーンが目立つ。ブラウンはツール第3ステージで逃げに乗り、山岳賞ジャージを獲得。2日間にわたってマイヨアポワを着用した。マグヌソンはスウェーデンチャンピオンジャージを着用しているため、逃げに乗ってジャージをアピールしたいところだ。

大幅戦力ダウンしたチームの底力

グランツール:★★★★☆
北のクラシック系:★★★☆☆
アルデンヌクラシック系:★★☆☆☆
スプリント:★★★★☆

総合はウランとウッズ、北のクラシックはヴァンマルク、スプリントはモードロへの依存度が高く、主力選手が大量流出した影響は非常に大きいようだ。

ただ、チームとしてはエデュケーションファースト社との3年契約の間で勝てるチームに立て直すことができればいいだろう。スポンサー問題のため、他のチームより選手獲得に乗り出すことが遅れた影響は大きそうだ。2018年はこの戦力で何とか乗り切って、オフにしっかりと補強を進めたいところだ。

・関連リンク

オンライン英会話のEF English Live

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