BMCレーシング戦力分析!【2018年シーズン】

グレッグ・ヴァンアーヴェルマート、リッチー・ポート、ディラン・トゥーンス、ローハン・デニスらタレントは揃っているBMCレーシング。

だが、2018年シーズンに向けて重要なアシスト選手の多くが引退または移籍したため、チーム力がダウンしている印象は否めない。若手の成長とエースの底力に期待した布陣となっている。

BMCレーシング2018ロースター

リッチー・ポート(オーストラリア)
グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー)
ディラン・トゥーンス(ベルギー)
ローハン・デニス(オーストラリア)
ニコラス・ロッシュ(アイルランド)
トム・ボーリ(スイス)
ブレント・ブックウォルター(アメリカ)
ダミアーノ・カルーゾ(イタリア)
アレッサンドロ・デマルキ(イタリア)
ジャンピエール・ドリュケール(ルクセンブルク)
キリアン・フランキーニー(スイス)
シュテファン・キュング(スイス)
ジョセフ・ロスコフ(アメリカ)
ミヒャエル・シェア(スイス)
マイルズ・スコットソン(オーストラリア)
ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ)
ネイサン・ヴァンフーイドンク(オランダ)
フランシスコホセ・ベントソ(スペイン)
ロイック・ヴリーヘン(ベルギー)
ダニーロ・ヴィス(スイス)

・新加入選手
アルベルト・ベッティオール(イタリア)←キャノンデール・ドラパック
パトリック・べヴィン(ニュージーランド)←キャノンデール・ドラパック
サイモン・ゲランス(オーストラリア)←オリカ・スコット
ユルゲン・ルーランズ(ベルギー)←ロット・スーダル

・退団選手
マルティン・エルミガー(スイス)→引退
マヌエル・クインツィアート(イタリア)→引退
サムエル・サンチェス→引退
ダニエス・オス(イタリア)→ボーラ・ハンスグローエ
シルヴァン・ディリエ(スイス)→AG2Rラモンディアール
ベン・ヘルマンス(ベルギー)→イスラエルサイクリングアカデミー(PCT、イスラエル)
マヌエル・センニ(イタリア)→バルディアーニ・CSF(PCT、イタリア)
アマエル・モワナール(フランス)→フォルトゥネオ・サムシック(PCT、フランス)
フローリス・ヘルツ(オランダ)→ルームポット・ネーデルランセローテライ(PCT、オランダ)
ブラム・ヴェルデン(オランダ)※トレーニー→フォルトゥネオ・サムシック(PCT、フランス)
パトリック・ミューラー(スイス)※トレーニー→ヴィタルコンセプト クラブ(PCT、フランス)

ポート悲願のグランツール制覇なるか

昨年に引き続きポートがグランツールのエースを務め、狙うはもちろんツール・ド・フランスでマイヨ・ジョーヌを獲得することだ。

2017年シーズンは、シーズン初戦のツアー・ダウンアンダーで2勝をあげ総合優勝、パリ〜ニース1勝、ツール・ド・ロマンディ総合優勝、クリテリウム・デュ・ドーフィネでは個人TTで勝利して総合2位と、かつてないほどに好調をキープしてツールへ臨んだ。

しかし、第9ステージの雨のダウンヒルで落車して無念のリタイア。怪我もかなり重傷で、10月のジャパンカップ・サイクルロードレース(1.HC)で復帰したものの、本来の走りとは程遠いコンディションであった。

だが、来シーズンに向けてコンディション面を心配する必要はないだろう。

2016年シーズンも、リオ五輪で落車してリタイア。怪我の影響でシーズンの残りレースを全て欠場したものの、逆にマイペースで調整をすることができて、翌年のツアー・ダウンアンダーでは別格の走りを見せていた。来季に向けても2016〜2017年と同じようなアプローチでコンディションを高めることは可能だろう。

心配なことは、2016年リオ五輪、2017年ツールと2年連続ダウンヒルで落車して大怪我を負っていることである。精神的なトラウマになっていないだろうかと、第三者目線では心配になってしまうところである。

近年、グランツールで総合優勝を果たす選手は、みなダウンヒルが上手い。ダウンヒルでの遅れが総合争いにおいて致命傷になりかねないことが、ポートの最大の弱点だといえよう。

一方で、ポートの登坂力は現役最強といっても過言ではないレベルに達している。クリテリウム・デュ・ドーフィネ第8ステージのプラトー・ド・ソレゾンの上りでは、1分20秒先行していたクリストファー・フルームを猛追し、山頂では逆に21秒突き放してフィニッシュする鮮烈なヒルクライムを見せていた。

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TT力も年々上昇している印象を受けるため、グランツール総合優勝の超有力候補だといえよう。それだけにダウンヒルの克服さえできれば、死角なしといったところだろうか。

本人はツールへのこだわりが強く、2018年もツール総合優勝が最大の目標となるだろう。2014年ツール第5ステージの石畳ステージでは、ヴィンチェンツォ・ニーバリからは2分近く遅れたものの、ロマン・バルデやアルベルト・コンタドールといった総合有力勢からは20秒ほどリードを築いてフィニッシュしている。アシストしていたゲラント・トーマスの功績も大きいが、決して苦手ではないものと思われる。

ポートを支える山岳アシスト陣の補強はなし

山岳アシストには、ロッシュ、カルーゾ、ヴァンガーデレン、ブックウォルターといった面々が控えている。個々の力は高いものの、層という点では薄いといわざるをえない。

移籍1年目だったロッシュは、シーズン前半は存在感を発揮することはできなかった。終盤のブエルタでは総合13位、ツアー・オブ・広西では総合3位と尻上がりに調子をあげていた。チームにもフィットしたであろう2年目のシーズンには、より大きな期待がかかる。

カルーゾはツール・ド・スイス総合2位と上りに強い姿を見せており、ツールではポートのリタイア後はエース格として走り、総合11位にまとめた。

ヴァンガーデレンはジロ・デ・イタリア第18ステージで意外にも自身初のグランツールでのステージ優勝を飾り、ブエルタでは総合10位と2014年ツール以来のグランツール総合トップ10入りを果たした。1週間のステージレースではエースを担う機会もあるが、ツールではポートのアシストとして走る計画が明らかとなっている。

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ブックウォルターはアメリカのステージレースには滅法強いものの、ヨーロッパではなかなか思うどおりの活躍が見せられていないことが気がかりだ。

山岳アシストではないが、TTスペシャリストのデニスもゆくゆくはグランツールレーサーになることを見据えて、ステージレースに帯同することが増えるだろう。2017年は怪我や体調不良に悩まされ、思うような走りができなかっただけに、更なる飛躍を期待したい。

ドーピングが発覚し、そのまま引退したサムエル・サンチェス、昨年まで山岳アシストを務めることが多かったヘルマンス、センニ、モワナールが移籍した穴を埋める補強はされていない。

ヴァンアーヴェルマート、トゥーンス、ゲランスでワンデークラシックを狙う

2017年ワールドツアー個人ランキング1位に輝いたヴァンアーヴェルマートが、チームの絶対的エースとしての立場をより強固なものとしている。

2017年シーズンはパリ〜ルーベを制したこともあり、2018年は自身の地元を走るロンド・ファン・フラーンデレンで是が非でも勝利したいところだ。

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だが、パリ〜ルーベではMVP級のアシストを見せたオスが移籍し、チームの屋台骨ともいえるエルミガーとクインツィアートは引退した。この3人の穴を埋めるべく、ルーランズ、ベッティオール、ベヴィンを獲得した。

ルーランズは、2013年ロンド・ファン・フラーンデレン3位、2016年ミラノ〜サンレモ3位という実績を持ち、パリ〜ルーベでも終盤まで集団前方でレースを展開できる力を持っている。単独エースを担う力もある上に、ヴァンアーヴェルマートのアシストとしても非常に心強い存在となるだろう。

ベッティオールは、北のクラシックを中心にアシストとして活躍しており、ヴァンアーヴェルマートの相棒として期待される。

ベヴィンは、スプリンターとして走る機会が多かったものの、BMCでは体格を活かして北のクラシックのアシスト要員として鍛えられるのではないかと思われる。

さらに、若手では2017年は3勝あげた23歳のキュング、23歳のオーストラリアロードチャンピオンのスコットソン、23歳のボーリ、23歳のヴリーヘン、22歳のトレーニー上がりのヴァンフーイドンクに加え、ベテランのドリュケール、ベントソも北のクラシック要員として期待される。

そして、アルデンヌクラシックなど上りの多いワンデークラシックではトゥーンスと、新加入のゲランスがエースとして走ることになるだろう。

トゥーンスは、ヴァンアーヴェルマートを差し置いてチーム最多勝となる8勝をあげ、大ブレイクを果たした選手だ。その勝利は全てステージレースであげたもので、来季はワンデーレースでの勝利が期待される。フレーシュ・ワロンヌでは3位に入ったように、激坂の突破力は随一だ。

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ゲランスは、2012年ミラノ〜サンレモ、2014年リエージュ~バストーニュ~リエージュを制したこともあるベテラン選手だ。2017年は未勝利に終わったものの、まだ勝利への執念は潰えていない。オーストラリアのチームを飛び出して、己の勝利のためにBMCで走ることになる。

アシスト要員としては、デマルキ、シェアは昨年のアルデンヌクラシック3連戦に出場していた。カルーゾもセカンドエース的な位置づけでアルデンヌクラシックを走ることもできる。

だが、2017年のリエージュ~バストーニュ~リエージュに出場した選手8人のうち4人が移籍してしまった。抜けた穴の補充は、ゲランス1人のみである。2018年は出場枠が8人から7人に減るものの、アルデンヌクラシック系要員はやや戦力が心もとないように見える。

チームとしては、トゥーンスに大きな期待が寄せているだけに、北のクラシック要員から上りにも強い選手をアルデンヌに回す可能性もあるだろう。

2017年のアルデンヌクラシックには出場しなかった、ヴィス、フランキーニー、ロスコフあたりも出場の可能性があるだろう。

スプリンターはほぼ不在

チーム唯一のスプリンターがドリュケールだ。2017年もスプリントで2勝をあげている。一方で、ボブ・ユンゲルスを下してルクセンブルクTT王者になったように、独走力の高さも売りの一つであり、純粋なスプリンターではない。

ベントソもスプリンター的な脚質を持っているものの、今では平坦アシストとして働く機会が多い。

ベヴィンは前チームではスプリンターとして走る機会もあったが、ピュアスプリンターに勝てるような脚質ではないので、あくまでステージレースにおけるオプション扱いだろう。

少数精鋭ながら北のクラシックに重点を置く布陣

ステージレース:★★★★☆
ワンデーレース:★★★★★
ステージ優勝:★★★★★
スプリント:★★☆☆☆

2017年は31人(トレーニーを除くと29人)から、2018年は24人へとチーム人数を減らした。グランツールやワンデークラシックの出場枠が1人ずつ減るとはいえ、かなり人数を絞っている印象を受ける。

特に山岳アシストと、アルデンヌクラシック要員がごっそりいなくなった影響は大きいはずだ。一方で北のクラシック要員はしっかりと戦力補強しており、BMCとしてヴァンアーヴェルマート中心のチーム作りをしている意図が伝わってくる。

さらに、24人中8人が25歳以下の選手だ。若手の成長を待つようでは、戦力ダウンが避けられないなか、実に3分の1を若手で構成したということは、その若手陣への期待の裏返しとも取れるだろう。重要なレースに出場させざるを得ない分、成長を加速させることは大いにあり得る。

ステージレースはポート、短いステージレースではトゥーンス、北のクラシックではヴァンアーヴェルマート、アルデンヌクラシックではトゥーンス、ゲランス、そして個人TTではデニス、キュングらの勝利が期待される。

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