サイバナ

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コラム

カルテットを脅かす、スプリンター・ニュージェネレーションズとは?

2017/03/15

日本からは地球の真裏に位置するようなアルゼンチンで、サイクルロードレースが行われている。昨年までは、ツール・ド・サンルイスが南米で最も著名なレースであったが、財政難のため2017年から開催中止となってしまった。

だが、ツール・ド・サンルイスより歴史の長いレースが、もう一つアルゼンチンでは開催されていた。そのレースこそが、ブエルタ・サンフアンである。初開催は1982年。長らくアルゼンチンのアマチュアレースとして開催されていた。

ツール・ド・サンルイスの舞台となるサンルイス州は、ブエルタ・サンフアンの舞台となるサンフアン州のお隣だ。サンルイスが中止となったことで、サンフアンがUCI公認レースとして昇格を果たし、2017年からカテゴリー2.1のステージレースとして初開催となる。

そのブエルタ・サンフアン第4ステージで、クイックステップ・フロアーズのフェルナンド・ガヴィリアが2勝目をあげた。

第2ステージでは、トム・ボーネンをリードアウトして、ボーネンを勝たせることに成功しているので、ブエルタ・サンフアンはもはやガヴィリアの独壇場だ。

ガヴィリアは、2017年8月に23歳となるとても若い選手である。ツアー・ダウンアンダーを席巻したカレブ・ユアンもいま、若手スプリンターの台頭が著しい。

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スプリンターカルテットの若手時代

※参考:ドーハの地で覇権を争う『スプリンターカルテット』とは?

スプリンターカルテットとは、わたしが勝手に名付けた、マーク・カヴェンディッシュ、アンドレ・グライペル、マルセル・キッテル、アレクサンダー・クリストフの4名を称したものである。スプリンターとしては、この4名の実績が他の選手たちを凌駕しているからだ。

世界チャンピオンであるペーター・サガンはパンチャーとしても超一流なので、別格扱いとしてこの4名には含んでいない。

この4名が若手時代、どのようにしてトップシーンに出てきたのかを調べてみる。

マーク・カヴェンディッシュの場合

2007年、当時Tモバイルに所属していたカヴェンディッシュは、ダンケルク4日間レースで2勝、ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャで2勝、エネコツアー1勝、ツアー・オブ・ブリテン2勝と、一気に勝ち始めた。

この時はまだ22歳であった。

Tモバイルはチーム・コロンビアへと変わった2008年、23歳となったシーズンにはジロ・デ・イタリアでグランツール初ステージ優勝を飾り、ツール・ド・フランスでもステージ4勝をあげ、一躍トップスプリンターの仲間入りを果たした。いや、この時代の最強スプリンターの一人であり続けた。

アンドレ・グライペルの場合

2007年から2010年まで、カヴェンディッシュとグライペルはチームメイトだった。

先に台頭したのはカヴェンディッシュであったが、グライペルも負けじと2008年にツアー・ダウンアンダーで4勝&総合優勝を果たして、名乗りをあげた。26歳のシーズンの出来事であった。

同年、ジロ・デ・イタリアで1勝、エネコツアー1勝、ドイツツアー1勝と、ワールドツアークラス(※当時の呼び名はプロツアー)のレースで勝利を積み重ねていった。

マルセル・キッテルの場合

2011年、当時プロコンチネンタルチームだったスキル・シマノで連勝街道を突き進んだ。

ダンケルク4日間レースで4勝、ツール・ド・ポローニュで4勝、そしてブエルタ・ア・エスパーニャでも1勝をあげる活躍を見せた。キッテル23歳の年である。

25歳となった2013年のツールでは、ステージ4勝をあげ、世界に鮮烈な印象を残した。

アレクサンダー・クリストフの場合

2010・2011年とBMCレーシングに所属していたが才能は開花せず、2012年にカチューシャへ移籍する。

移籍した翌年の2013年には、ツアー・オブ・ノルウェー3勝、ツール・ド・スイス1勝をあげた。当時26歳であった。

翌2014年はミラノ〜サンレモ優勝、ツール2勝、ヴァッテンフォール・サイクラシックス(現サイクラシックス・ハンブルク)優勝など、猛烈に勝ちまくった。

2014年から2016年までの3年間で47勝をあげる凄まじい勝ちぶりを見せいている。

この4名のキャリアを振り返ると、カヴェンディッシュとキッテルは22〜23歳から台頭しているが、グライペルとクリストフは26歳と少々遅咲きと言えることが分かった。

つまり、26歳以下の生きのいいスプリンターたちには、一流のスプリンターになり得る素質が眠っていると言えよう。

素質が既に開花しつつあるスプリンターも含めて、注目のスプリンターを列挙したい。

2017年、注目の若手スプリンターたち

カレブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット、22歳)

ツアー・ダウンアンダー4勝という圧倒的な結果を残している。

2015年から現在までに20勝をマークしており、将来的にはスプリンターカルテットに並びうる一流スプリンターになるに違いない。

※参考:使えるものは全て使うカレブ・ユアンの理詰めのスプリントとは?

今シーズンは、ジロ・デ・イタリアに参加する予定だ。ツール不出場が決まったわけではないが、願わくばツールの舞台でスプリンターカルテットとの直接対決を見てみたい。

フェルナンド・ガヴィリア(コロンビア、クイックステップ・フロアーズ、22歳)

サンフアンでのステージ優勝を含めて、すでに13勝をあげている。2016年はパリ〜トゥールを制している。

※参考:パリ〜ツールを制したフェルナンド・ガヴィリアのロングスプリントは、ドーハで通用するのか?

2016年まではトラック競技を最優先させており、UCIトラック世界選手権ではオムニアム部門で優勝し、リオ五輪でも金メダルを狙ったが4位に終わった。ある意味、片手間でやっていたロードで10勝以上あげている、恐ろしい鬼才である。

ガヴィリアは2017年からはロードに専念するとのことで、更なる飛躍が期待される。

今年はいよいよジロ・デ・イタリアでグランツールデビューを果たす。

ディラン・フルーネヴェーヘン(オランダ、ロットNL・ユンボ、23歳)

2016年、22歳のシーズンにオランダ国内選手権優勝、ツアー・オブ・ブリテン1勝、エネコツアー1勝と、計11勝をあげる活躍を見せた。

まだまだ伸びしろを感じさせる逸材で、ワールドツアーレベルのレースでの勝利経験を重ねていきたいところだ。

ニッコロ・ボニファツィオ(イタリア、バーレーン・メリダ、23歳)

2014年、21歳のシーズンに、ツアー・オブ・ジャパン1勝、ツアー・オブ・ハイナン3勝をあげていた。

そして、2016年にワールドツアー初勝利となるツール・ド・ポローニュでステージ優勝を果たし、これまでに通算8勝をあげている。

身長172cmと小柄な体格であるが、ユアンと同様に深い前傾姿勢で空気抵抗を減らすスプリントスタイルである。

マグヌス・コルトニールセン(デンマーク、オリカ・スコット、24歳)

2016年、ブエルタ・ア・エスパーニャで2勝をあげる活躍を見せ、一躍スターダム戦線へと躍り出た才能である。

ブエルタでは、決して運ではなく実力だと確信させる強い勝ち方を見せていた。同僚のユアンと共に、どれだけ勝ち星を増やせるのか楽しみなところだ。

サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ、26歳)

通算12勝をあげているが、まだワールドツアーでの勝利経験はない。

しかし、2017年ボーラ・ハンスグローエとしてワールドチームに昇格したことで、初めてワールドチームに所属する運びとなった。

早速、ツアー・ダウンアンダーでは同僚のペーター・サガンに勝るとも劣らないキレ味の良いスプリントを見せ、大器の片鱗を見せていた。

サガンの相棒としてだけでなく、エーススプリンターとしてのワールドツアーで暴れてほしいところだ。

ニキアス・アルント(ドイツ、チーム・サンウェブ、25歳)

2014年、23歳のときに、クリテリウム・ドーフィネでステージ優勝をあげ、2016年25歳の時にジロ・デ・イタリアでステージ優勝を果たした。

21歳の頃からワールドチームに所属していることもあり、プロ通算4勝に留まっている。ワールドツアーレベルで通用するスプリント力は間違いなく持っているので、覚醒に期待したい選手の一人だ。

マックス・ワルシェイド(ドイツ、チーム・サンウェブ、23歳)

2016年シーズンも暮れの暮れとなる、10月下旬のツアー・オブ・ハイナンでプロ初勝利を含むステージ5勝をあげ、突如覚醒を果たした注目選手である。

ツアー・オブ・ハイナン以外では、さしたる実績もなくブラフなのか本物なのか判断が難しいところではあるが、ともかく楽しみな逸材であることに違いはない。

スプリンター・ニュージェネレーションズに注目

ここで紹介した8名に加えて、25歳にして通算37勝のアルノー・デマール(フランス、FDJ)、26歳にして通算52勝のナセル・ブアニ(フランス、コフィディス)もこの世代の選手たちである。

新世代のスプリンターたちの突き上げに、カルテットのベテラン陣はうかうかしていられないだろう。

2017年は、スプリンター同士の戦いが非常に熱くなる。

Rendez-Vous sur le vélo…

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