サイバナ

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その他レース2017

2017年シーズンを振り返る!独断と偏見によるベストレースTOP10〜その2〜

2017/11/24

サイクルロードレースの1年間を振り返る、個人的ベストレースランキングを発表していく。

第2弾は、6位〜4位までを紹介する。

・10位から7位までの第1弾記事はこちら

2017年シーズンを振り返る!独断と偏見によるベストレースTOP10〜その1〜

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6位、真っ向勝負でクライマーを叩き潰した驚異的なヒルクライム

大会前に、この男が総合優勝すると予想していた人はどれくらいいただろうか。

確かに2015年ブエルタ・ア・エスパーニャでは、あと少しで総合優勝に手が届く位置につけており、2016年ツール・ド・フランスでは超級山岳アンドラ・アルカリスで独走勝利を飾っていた。とはいえ、近年の走りを見るとTTスペシャリストとしての側面が強いように思え、さすがにグランツールで総合優勝するとは思えなかった。

だが、そのような前評判を完全に覆したのは、このジロ・デ・イタリア第14ステージではないだろうか。聖地オローパの上りで見せたトム・デュムランのヒルクライムに世界が驚愕したのだ。

前評判ではナイロ・キンタナを総合優勝に推す声が最も多かっただろう。そのキンタナは第9ステージのブロックハウスの上りではライバルを圧倒する独走勝利を飾っていた。デュムランは同ステージで24秒差の3位に入っていたとはいえ、キンタナ有利の論調は変わらなかった。

第10ステージの個人TTでデュムランが圧勝すると、キンタナに2分23秒差をつけて総合首位に立った。とはいえ、これからジロの山岳ステージは厳しさを増すばかり、最終第21ステージの個人TTを考慮しても、キンタナがデュムランに4〜5分差をつけるに違いない。デュムランはいかに耐えるのか、という点にフォーカスされていたと思う。

そのような状況で迎えた第14ステージは、聖地オローパへとフィニッシュするステージだった。残り8kmを切ってからは、平均勾配8%前後の上りが続く難所だ。

チーム力でも勝るモビスターが、アシストを使って集団を絞り込んだところで、エースのキンタナは集団から飛び出して先行し、独走へと持ち込んだ。

これを追うのは、もちろんマリアローザを着るデュムランの仕事だった。しかし、クライマーのキンタナの上りを、TTスペシャリストのデュムランが追うのは厳しいだろう。誰もがそう思っていた。

ところが、キンタナは思うように後続との差を開けなかった。それどころか、タイム差は徐々に縮まりつつあったのだ。キンタナは不調だったのか、いやデュムランがあまりにも上れていたのだった。

デュムランのペース走行により、じわりとじわりとキンタナとの差を詰めていくと、残り1.5km地点でキンタナを捉えてしまった。

これだけでも驚きであるが、デュムランはここで逆にキンタナに対してカウンターアタックを仕掛けたのだ。それまでとは打って変わって、ダンシングを多用しながらキンタナとの差を開きにかかった。虚を突かれたキンタナは反応が遅れて、デュムランの先行を許してしまう。

そのまま、キンタナはデュムランの背中を視界に捉えつつも、追いつくことができなかった。当のデュムランはザッカリンとのマッチスプリントを制してステージ優勝を飾ったのだ。

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守り一辺倒になると思われたデュムランに思わぬ逆襲をくらったキンタナ。モビスターとしてもチーム戦略に大きな誤算が生まれたことだろう。

デュムランは決して強くないチームメンバーのアシストを受けながら、第16ステージではまさかのトイレアクシデントもあり表彰台では完全なる無表情を披露、第17ステージで沿道でトイレットペーパーを持って声援を送るファンを見て思わず笑ってしまい、第18ステージ終了後にキンタナとニーバリを挑発する舌禍を引き起こし、翌第19ステージではバッドデーが重なり大失速。第20ステージもキンタナ・ニーバリ連合に苦しめられ、最終日の個人TTで再逆転し総合優勝を飾った。

今年のジロは間違いなく名勝負だったといえよう。その中心はデュムランであり、第14ステージの走りが生み出したドラマだったのだ。

※参考
デュムランが攻撃的な走りで山頂フィニッシュを制す 総合争いでもリード拡大

トム・デュムラン個人TT圧勝!ジロ総合優勝は本当に可能なのか?

サンウェブアシスト通信Vol.5(終)〜31秒を生み出した弱き者たち〜

ジロ・デ・イタリア第14ステージのリザルト

5位、完璧すぎるアタックと、前人未到の大記録達成

プロサイクリストであれば、誰もが抱く憧れのジャージ。それは、虹色のアルカンシェルだろう。マリアローザ、マイヨジョーヌ、マイヨロホも、それぞれ名誉であることに違いないが、アルカンシェルは別格の存在だ。

ゆえに、世界選手権を走る選手たちの本気度はMAXだ。さらに、世界選手権はUCIランキングにもとづいた出場枠が国ごとに割り当てられ、国別対抗戦の形式をとっている。普段はチームメイトな選手たちも、出身国が違えば、この日はライバル同士となる。同じ国の選手同士は基本的には仲間ではあるものの、アルカンシェルを着用できる権利はただ1人のみに与えられる。したがって、アルカンシェルの野望をむき出しにしている選手が複数名いる国は、一筋縄ではいかない。

という普段とは違った空気感のなかで行われる世界選手権というレースが個人的には大好きだ。栄光のジャージを懸けて、様々な思惑が交差する油断も隙もないレース展開が繰り広げられるからだ。

今年の世界選はペーター・サガンが史上初の3連覇なるかどうか注目されていた。しかし、サガンの出身国であるスロバキアはロードレースでは後進国の部類に入る。サガン1人で稼ぎ出したポイントのおかげで、6人の出場枠を確保したものの、戦力的にはアテになる選手は兄のユライ・サガンとミカエル・コラーくらいだった。

対して、オーストラリア、ノルウェー、イタリア、ベルギー、フランスなどは9人の出場枠を確保している上に、ワールドチームで活躍する選手たちがズラリと顔を揃えている。サガンは自身へのマークの厳しさと圧倒的なチーム力の差というビハインドを背負って走らざるを得なかった。

レースは終盤、アップダウンを利用して集団からは絶え間なくアタックが続いていた。200km以上走ってきた選手にはなかなか堪える状況が続いたものの、決定的な逃げには繋がらないまま最終周回を迎えた。チーム力に劣るサガンは、ひたすら集団内で息を潜めていた。

すると最大の難所であるサーモンヒルの上りで、オランダ代表のトム・デュムランがアタックを仕掛けた。このアタックに最初に反応したのがフランス代表のジュリアン・アラフィリップだった。デュムランの背後につくと、間髪入れずにダンシングでアタックを決行。

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これまでの争いの中で生まれたアタックとは比べ物にならないほどの凄まじい加速により、集団を一気に置き去りにした。アラフィリップをマークしていたグレッグ・ヴァンアーヴェルマートですら、アラフィリップの加速には全くついていくことができなかった。

唯一、ジャンニ・モズコンだけがアラフィリップにブリッジをかけることができ、2人で逃げる展開となった。(※後にモズコンはレース中にチームカーに掴まっていたことが発覚し失格となった。)

7〜8秒のリードを築いて、アラフィリップたちは逃げる。十分な人数を揃えている追走集団は協調体制がうまく取れず、アラフィリップたちを視界に捉えてはいるものの差が縮まらないという、典型的な勝利が決まるパターンに持ち込まれていた。

25歳3ヶ月のアラフィリップはもし世界選を勝利するとなると、U-23部門が設立された1996年以降では、23歳7ヶ月で勝利したオスカル・フレイレ、24歳で勝利したミカル・クウィアトコウスキーに次ぐ、3番目に若い記録達成となる。

歴史が動く瞬間に向けて、アラフィリップのアタックは完璧なタイミングで決まったかに思えた。

しかし、後続集団からは勝負に絡めそうにない中堅国のエースたちが先頭にブリッジをかけようとする動きが活性化した。結果として集団のスピードは上がり、アラフィリップは残り2kmを切ったところであえなく吸収となった。

すると混戦の集団内から、ずっと息を潜めていたサガンが集団前方に位置する。地元ノルウェーのアレクサンダー・クリストフの番手につけてスプリントを開始。最後はホイール3分の1個分差をつけて、サガンが先着し、世界選3連覇の偉業を成し遂げたのだった。

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ラスト数周の目まぐるしい攻防も見応えがあったし、サガンの3連覇という歴史的瞬間をリアルタイムで目の当たりにできたことも印象的だったが、それら以上に最終周回のサーモンヒルで見せたアラフィリップのアタックのキレ味の鋭さが強烈な印象を残した。今シーズン、見てきたレースのなかで最も強力なアタックだったように筆者には見えた。

もはや天命ともいえるアルカンシェルにとことん愛されたサガンの勝利と、栄光には届かなかったもののアラフィリップという選手のポテンシャルの高さに改めて驚かされたレースだった。

※参考

栄光を掴み損ねたアラフィリップ。完璧だったレース戦略を立てた名将の誤算とは?

ペーター・サガンのロード世界選手権4連覇は可能だろうか?

最終周回、サーモンヒルの上りは5:25:55頃から。

中継トラブルによって途切れていた残り4kmからの空撮映像。サガンがするするとポジションを上げていることがわかる。

4位、大舞台で決めた常識では考えられない独走逃げ切り

ロンド・ファン・フラーンデレンで勝利を飾ることは、アルカンシェルを獲得することと同じくらい、一部のプロサイクリストにとっては死にたいくらい憧れることだ。

フィリップ・ジルベールもその1人だった。

アルデンヌクラシックの王様とまで呼ばれた男が、ステップアップのために移籍したBMCレーシングでは鳴かず飛ばずの成績が続いていた。そして、北のクラシックではグレッグ・ヴァンアーヴェルマートら他のチームメイトが優先され、ジルベールの居場所は徐々に失われていた。

35歳を迎えるシーズン、減俸覚悟でベルギーのワールドチームであるクイックステップ・フロアーズに移籍した。しかし、クイックステップも春のクラシックでは銀河系軍団を呼称するほど、豊富な人材が揃っており、ベテランのジルベールにとって決して都合の良いチームとは思えなかった。

さらに昨シーズンのクイックステップは、強力なメンバーを集団前方に複数名送り込んでも、なんやかんやで勝てない日々が続き、春のクラシックシーズンで未勝利という失態を犯している。

という状況で、春のクラシックシーズンを迎えたものの、やはり数的有利を活かしきれないレースが続いていた。

だが、その悪循環も断ち切られる時が訪れた。しかも立役者はジルベール自身だったのだ。

ドワルス・ドール・フラーンデレンでは、終盤にジルベール、チームメイトのイヴ・ランパールト、オリカ・スコットのルーク・ダーブリッジ、アスタナのアレクセイ・ルツェンコを含む4人の小集団で抜け出すことに成功した。圧倒的な数的優位を築いたものの、これまでのクイックステップのレースを見ていると、この有利さえ活かしきれずに負けることが続いていた。

ジルベールとランパールト、明らかに実績も実力もジルベールの方が上だった。ダーブリッジもルツェンコも当然ジルベールをマークしていたなかで、ジルベールは自分へのマークを逆用し、ランパールトにアタックを仕掛けさせたのだ。虚を突かれたダーブリッジとルツェンコは、ランパールトの独走を許してしまった。そうして、見事にランパールトが勝利を飾り、チームの春のクラシック連敗記録をストップさせたのだった。

ジルベールは、身をもってチームプレーの大切さを示した。強烈なメッセージは一気にチーム内に浸透したのだ。

ロンドでは、クイックステップの組織的な走りが際立っていた。勝負どころには程遠いと見られていた残り95km地点のミュール・カペルミュールで仕掛けたトム・ボーネンのペースアップをきっかけに、ジルベールを含む小集団が抜け出すことに成功し、前年度王者のペーター・サガンやグレッグ・ヴァンアーヴェルマートらをメイン集団内に置き去りにすることに成功した。

極めつけは残り55km地点のオウデ・クワレモントで小集団からも先行したジルベールが独走開始。どう考えても無茶にしか思えなかったジルベールの独走劇は成功を収めた。フィニッシュ地点では、自分の乗っていたバイクを持ち上げながらガッツポーズ。

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サガンたちの落車というアクシデントはあったものの、ただひたすら勝利を望んだジルベールとクイックステップ・フロアーズの底力が発揮されたレースだった。

ロンドを勝ったジルベールは2週間後のアルデンヌクラシック初戦のアムステルゴールドレースでも勝利した。ドワルス・ドール・フラーンデレンから始まった1ヶ月間のジルベールの姿は、2011年にアルデンヌクラシック3連勝を飾った姿に勝るとも劣らない輝きを見せていた。

フィリップ・ジルベールはクイックステップのエースではないのか?

グレッグ・ヴァンアーヴェルマート悲運の2位。精密コンピュータに生じた狂いとは?

ロンド・ファン・フラーンデレン2017の中継映像。

時間がない人のためのハイライト映像。

その2はここまで。TOP3も近日公開予定。

・第1弾はこちら

2017年シーズンを振り返る!独断と偏見によるベストレースTOP10〜その1〜

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