モビスター戦力分析!【2018年シーズン】

ナイロ・キンタナ、アレハンドロ・バルベルデの2大エースに加えて、ミケル・ランダが移籍してきたモビスター。

完全にステージレースに特化したチームとなっている。

モビスター2018ロースター

ナイロ・キンタナ(コロンビア)
アレハンドロ・バルベルデ(スペイン)
アンドレイ・アマドール(コスタリカ)
ウィネル・アナコナ(コロンビア)
ホルヘ・アルカス(スペイン)
カルロス・バルベロ(スペイン)
ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア)
カルロス・ベタンクール(コロンビア)
ヌーノ・マトス(ポルトガル)
リカルド・カラパス(エクアドル)
エクトル・カレテロ(スペイン)
ビクトル・デラパルテ(スペイン)
イマノル・エルビティ(スペイン)
ルーベン・フェルナンデス(スペイン)
ネルソン・オリヴェイラ(ポルトガル)
アントニオ・ペドレロ(スペイン)
ダイエル・キンタナ(コロンビア)
ホセ・ロハス(スペイン)
マルク・ソレル(スペイン)
ヤシャ・ズッタリン(ドイツ)

・新加入選手
ミケル・ランダ(スペイン)←チームスカイ
ラファエル・バルス(スペイン)←ロット・ソウダル
ハイメ・ロソン(スペイン)←カハ・ルラル(PCT、スペイン)
エドゥアルド・セプルベダ(アルゼンチン)←フォルテュネオ・オスカロ(PCT、フランス)
ハイメ・カストリリョ(スペイン)←アマチュアチーム

・退団選手
ヨナタン・カストロビエホ(スペイン)→チームスカイ
アレックス・ドーセット(イギリス)→カチューシャ・アルペシン
ゴルカ・イサギレ(スペイン)→バーレーン・メリダ
ダニエル・モレーノ(スペイン)→EFエデュケーションファースト・ドラパック
ローリー・サザーランド(オーストラリア)→UAE・チームエミレーツ
ホセ・エラダ(スペイン)→コフィディス(PCT、フランス)
ヘスス・エラダ(スペイン)→コフィディス(PCT、フランス)
アドリアーノ・マローリ(イタリア)→引退

トリプルエース構想で悲願のツール総合優勝を

絶対的エースとして、グランツール表彰台を7回獲得、2014年ジロ・デ・イタリア、2016年ブエルタ・ア・エスパーニャ総合優勝という実績を積み重ねてきたキンタナにとって、安住の地と思われたモビスターで試練の年を迎えようとしている。

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一時代を築いたアルベルト・コンタドールが引退したことにより、スペインには自国スター選手の誕生が待ち望まれている。チームマネジャーであるエウセビオ・ウンスエ氏が、新加入のランダをスペインのスター選手に育てたいという強い意向を持っているというのだ。

さらに、バルベルデも石畳の含まれる2018年ツール・ド・フランスのコースを「自分向き」と語っており、マイヨ・ジョーヌへの野心を抱いている様子だ。

モビスターの目標は、キンタナがツールを総合優勝することだと思われていたが、キンタナかランダかバルベルデでツールを総合優勝することにシフトしつつあるように思える。内輪揉めが起きてもおかしくない状況で、チームは奇抜なアイデアをぶちまけた。

それが「トリプルエース構想」である。ツールで総合優勝を飾るために、キンタナ、バルベルデ、ランダの3人を出場させ、それぞれが総合優勝を狙うというものだ。

こんな無茶苦茶なアイデアがうまく行くはずがないと思うものの、ツール3連覇中のクリストファー・フルームを倒すためには常識にとらわれない突拍子もない作戦が功を奏す可能性も無きにしもあらず。

とはいえ、キンタナの実績はずば抜けており、ランダはアシストとして走る機会が多かったにせよ、グランツールでの最高成績は2015年ジロの総合3位で、次が2017年ツールの総合4位だ。いずれも、ファビオ・アル、フルームというエースの後ろ盾となってあげた好成績である。ランダは単独エースで結果を残したことはまだない。

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だからこそ、トリプルエース構想なのかもしれない。まだ3人がツールに出場すると決まったわけではないが、シーズン序盤のステージレースから、エースの覇権争いにも注目していきたい。

充実した山岳アシスト陣

実際にツールをトリプルエース構想で行く場合、ほとんど山岳アシストを必要とはしないだろうが、モビスターの山岳アシストの陣容は世界屈指の充実度を誇る。

2017年シーズンに活躍したアマドール、アナコナ、ベタンクール、デラパルテ、ソレルや、フェルナンデス、カラパスに加えて、新たにバルス、ロソン、セプルベダを獲得した。

アマドールはTTに強く、独走力に長けたオールラウンダーだ。ジロではキンタナのアシストとして、山岳でのサポートだけでなく逃げに乗ってリーダーチームを揺さぶる動きも素晴らしかった。

アナコナは生粋のクライマーで、ジロでは山岳地帯で鬼牽きする姿が度々見られた。ファーストネームのウィネル(Winner)を日本語訳にした「勝者」というタトゥーを腕に刻んでいる。

ベタンクールは、ハンマーシリーズ第1ステージの”ハンマークライム”で、無敵の登坂力を見せ、ツールでは総合18位に入った。長年不調に苦しんでいたが、いよいよ完全復活の時は近いだろう。

デラパルテは31歳ながら初めてのワールドチームで存在感を示すことができた。ジロではモビスターの山岳トレインの一角を立派に務めていた。

ソレル、フェルナンデスは共にツール・ド・ラヴニール(2.Ncup)総合優勝を飾った逸材である。

ソレルはボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ総合3位&新人賞を獲得した。パリ〜ニース第8ステージや、ブエルタ第5ステージ・第20ステージのように、逃げ切りからステージ優勝に絡むシーンがよく見られる。もしかしたら、グランツールレーサーではなくステージ優勝を狙うアタッカーの素質が開花するかもしれない。

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フェルナンデスは、2016年ブエルタで1日だけマイヨロホを着用することで目立ったが、2017年は際立った成績を残せなかった。

新加入のバルスは、2015年ツアー・オブ・オマーン(2.HC)総合優勝を果たした選手で、短いステージレースでは高い登坂力を見せている。セプルベダは2016年ツール・ド・サンルイス(2.1)で1勝をあげ総合2位という成績が目立つ。ロソンは、ツアー・オブ・クロアチア(2.1)で1勝をあげ総合2位、ブエルタ・ア・ブルゴス(2.HC)では総合5位だった。

カラパスはツール前哨戦の一つであるルート・デュ・スッド(2.1)で総合2位&新人賞を獲得した。ワールドツアーではまだ実績をあげられていないが、将来性豊かな若手クライマーだ。キンタナの弟のダイエルも、徐々にワールドツアーのスピードに適応してきている。

非常に豊富な山岳スペシャリストたちを揃え、どんなステージレースでもある程度の結果を残すことができそうだ。

平坦アシストは大幅戦力ダウン

一方で、平坦路でエースを支えるアシスト陣は大きく戦力ダウンとなっている。

2016年欧州TT選手権王者のカストロビエホ、元アワーレコード保持者のドーセット、グランツールで存在感を示していたサザーランドが揃って移籍してしまった。さらに平坦にも強く上れるゴルカ・イサギレに加えて、ホセ・エラダ、ヘスス・エラダも移籍した。平坦路で仕事できる選手の大量離脱は痛いはずだが、代わりとなる選手を補強していない点が気がかりだ。

現有戦力では、ベンナーティが平坦スペシャリストとして活躍が期待できる。ジロ第3ステージでは、クイックステップ・フロアーズが仕掛けた横風分断作戦に対し、しっかりとキンタナを護衛してタイムを失わずに済んだ。

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TTスペシャリストのオリヴェイラは、ある程度山も上れる選手で今のチーム事情ではとても重宝されるだろう。上れるスプリンターのロハス、オールラウンダーのアマドール、ドイツ国内TT選手権2位のズッターリンも同様だ。

エルビティは、スペイン人には珍しく石畳を含むクラシックレースを得意としており、2018年ツールに出場が予想される1人だ。アルカスは身長187cmの体格を活かした大型ルーラーだ。

最低限の人数は揃っているものの、どこかしらでしわ寄せが来てもおかしくない。

ワンデークラシックはバルベルデ頼みか

北のクラシックを走れる選手は、ベンナーティとエルビティくらいで、勝利を期待するのは難しいだろう。

アルデンヌクラシックは、バルベルデがフレーシュ・ワロンヌ4連覇中で、リエージュ~バストーニュ~リエージュも4度目の勝利をあげたように、バルベルデの独壇場に近い状況になっている。バルベルデが万全であれば、再び勝利をあげる可能性は非常に高い。特にフレーシュ・ワロンヌでは無敵といってよい走りを見せている。

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バルベルデに続く選手が見当たらないため、バルベルデが崩れるとワンデークラシックでは全く存在感を示すことができないかもしれない。

ちなみに、近年アルデンヌクラシックやイル・ロンバルディアで、バルベルデを除いて上位に入った選手としては、ベタンクールが2013年リエージュ~バストーニュ~リエージュで4位、ロハスが2017年アムステルゴールドレースで5位、キンタナが2017年イル・ロンバルディアで9位くらいだ。

スプリンターは2人のみ

バルベロとロハスがスプリンターの役割を担うことができる。

バルベロは2017年シーズン5勝をあげ、チーム内でバルベルデ、キンタナに次ぐ3番目の勝利数を稼いだ。ワールドツアーでの勝利はないものの、1クラスのワンデーレースやステージレースで勝利を狙うことができる。

ロハスももっぱらアシストとして走る機会が多いため、自身の勝利を狙うチャンスが少ない。年々、スプリント力より登坂力が増している印象を受けるので、山岳ステージでの逃げ切り勝利を期待できるかもしれない。

ステージレースに特化した布陣、アルデンヌクラシックはバルベルデに期待大

グランツール:★★★★★
北のクラシック系:★☆☆☆☆
アルデンヌクラシック系:★★★★★
スプリント:★★☆☆☆

キンタナ、バルベルデ、ランダのトリプルエースが機能すれば、ツール制覇も決して夢ではない。

少なくとも、1週間程度のステージレースでは勝利を量産できるはずだ。その際、豊富な山岳アシスト陣が活きてくるだろう。

アルデンヌクラシックは、バルベルデ頼みなところがあるが、モビスターはスペインで開催される下位カテゴリーのレースに積極的に出場しているのである程度の勝利数は稼げるはずだ。

一方で北のクラシック系とスプリントステージでは、ほとんど勝利を見込めない。

完全にステージレースに特化したチームだといえよう。

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2 COMMENTS

アディ

ここもいろんな意味で要注目なチームですね!
まずはバルベルデが怪我前のレベルまで復帰できるかが大きな鍵になりますね
彼が平凡なレベルだったらトリプルエース構想どころか、メインアシストとしても計算外になってしまって痛手です
来年のツールは個人TTの距離が短く、しかも得意?の終盤のステージでガッツリ上りもあるTTなので、ここで勝てなかったらキンタナはいつ勝つの?となってしまいます
まあエヴァンスのように、惜しい結果が続いて晩年に花を咲かせるパターンもありますが(^_^;)
波乱好きとしてはランダの乱も見てみたい気もします(笑)

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アバター画像 サイバナ管理人

アディさん

バルベルデは、復帰に自信があるようですが、さすがにベテランですし思うように回復しない可能性も完全には否定できませんね。
何だかんだでバルベルデは空気を読んでアシストできる選手だと思うので、ぜひとも復活してほしいものです。

石畳はバルベルデに加えて、エルヴィーティやベンナーティもいるので、モビスターはかなり有利なツールになる気がします。
トリプルエースでも、ランダとのダブルエースにせよチャンスはあるように思えるので、うまく機能することを期待するばかりです。

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