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戦力分析2018

チーム・サンウェブ戦力分析!【2018年シーズン】

2018/01/15

トム・デュムラン、マイケル・マシューズを軸に据えるチーム・サンウェブ。

ワールドチームのなかで最も所属選手の平均年齢が若く、伸びしろたっぷりのチーム構成となっている。

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チーム・サンウェブ2018ロースター

トム・デュムラン(オランダ)
ウィルコ・ケルデルマン(オランダ)
マイケル・マシューズ(オーストラリア)
ニキアス・アルント(ドイツ)
ソーレン・クラークアンデルセン(デンマーク)
フィル・バウハウス(ドイツ)
ロイ・クルフェルス(オランダ)
ヨハネス・フレリンガー(ドイツ)
サイモン・ゲシュケ(ドイツ)
チャド・ハガ(アメリカ)
クリス・ハミルトン(オーストラリア)
レナード・ホフステッド(オランダ)
レナード・ケムナ(ドイツ)
サム・オーメン(オランダ)
トム・スタムスナイデル(オランダ)
ローレンス・テンダム(オランダ)
ミケ・テウニッセン(オランダ)
マキシミリアン・ヴァルシャイド(ドイツ)

・新加入選手
エドワード・トゥーンス(ベルギー)←トレック・セガフレード
ルイス・ヴェルヴァーク(ベルギー)←ロット・ソウダル
マーティン・トゥスフェルト(オランダ)←ルームポット・ネーデランジェ・ロッテリー(PCT、オランダ)
ジェイ・ヒンドレー(オーストラリア)←ミッチェルトン・スコット(CT、中国)
マイケル・ストーラー(オーストラリア)←ミッチェルトン・スコット(CT、中国)

・退団選手
ラモン・シンケルダム(オランダ)→グルパマ・FDJ
ゲオルク・プライドラー(オーストリア)→グルパマ・FDJ
ワレン・バルギル(フランス)→フォルテュネオ・サムシック(PCT、フランス)
シンドレショースタッド・ルンケ(ノルウェー)→フォルテュネオ・サムシック(PCT、フランス)
ジーコ・ワイテンス(ベルギー)→ヴェランダス・ウィレムス・クレラン(PCT、ベルギー)
ベルト・デバッカー(ベルギー)→ヴィタルコンセプト(PCT、フランス)
アルベルト・ティマー(オランダ)→引退

デュムランを中心とした総合チームに

チーム・サンウェブの前身であるジャイアント・アルペシンや更にその前身のアルゴス・シマノ、スキル・シマノ時代は、完全なスプリンターチームであった。しかし、一人の才能の出現によって、チームビルディングを根底から覆し、いまや総合系チームへと変貌を遂げた。

その才能とはこのチームの絶対的エースとなったデュムランである。2015年ブエルタ・ア・エスパーニャで第20ステージまでマイヨロホを守り抜いた走りから、総合で戦える力を持っていることを十分に示していたが、2017年ジロ・デ・イタリアでいよいよ本領発揮となった。

第14ステージでは、ナイロ・キンタナら一流クライマーを振り切ってステージ優勝をあげ、トイレストップや舌禍からのバッドデーなどを乗り越えて、キンタナに31秒差をつけて総合優勝を果たす。

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さらに地元開催のビンクバンクツアーで総合優勝し、世界選手権でチームTTでサンウェブを世界一に導き、個人TTでは念願のアルカンシェルをゲットした。2017年に狙ったレースは全て獲ったのだ。

※参考:グランツールと世界選TTを同年に制したトム・デュムランの底知れぬ力とは?

2018年はクリス・フルームの連覇を阻止すべくツール・ド・フランスへの挑戦も噂されていたが、第一目標としてジロ連覇を目指すことを決めた。とはいえ、フルームもジロに出場予定であり、いよいよ両者のガチンコ総合バトルが勃発する(…予定である。フルームのサルブタモール基準値オーバー問題の結末次第ではあるが)。

ジロ連覇するために、2017年と同じスケジュールを組んで、アブダビツアー、ストラーデ・ビアンケ、ミラノ〜サンレモ、リエージュ~バストーニュ~リエージュを経てジロに挑む。2017年シーズンの成績と比較すれば、デュムランの調整が順調かどうか一目瞭然だろう。

サンウェブのもう一人の総合エースはケルデルマンだ。2017年ジロ第9ステージでは、道路端に停止していたモトバイクに接触してしまい落車。骨折して無念のリタイアとなってしまった。もし、ケルデルマンが無事だったらデュムランの総合優勝はもっとすんなりといったことだろう。

しかし、ブエルタでは終始安定した走りを見せ、グランツール自己最高の総合4位でフィニッシュした。特に第16ステージの個人TTで2位に入った走りが光る。平坦基調の40.2kmと長めの距離にも関わらず、ヴィンチェンツォ・ニーバリやイルヌール・ザカリンといったグランツールレーサーを抑えて、優勝したフルームから29秒遅れに留めた走りは特筆に値する。世界一に輝いた世界選手権チームTTのメンバーに選ばれたことも納得だ。

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厳しい上りでも崩れない走りに加えて、このTT力があればグランツール制覇も決して夢まぼろしではない。年齢もデュムランの1つ年下の26歳であり、今後の伸びしろにも十分期待が持てる選手だ。

そして、22歳のオーメンもグランツールレーサーの素質を持つ選手だ。2017年シーズンはケルデルマンのアシストとして、ツール・ド・ポローニュやブエルタで存在感を示した。それほど個人TTで目立った成績は残していないが、世界選チームTTのメンバーにも選ばれているように、オールラウンドに活躍できる選手だ。2018年はジロに出場予定で、デュムランの山岳アシストを務めることになる。

このように、総合エースを担いうる人材は揃っている。しかも、3人ともオランダ人で、チームはドイツ国籍ながらもメインスポンサーを務めるサンウェブ社もオランダの企業である。

※参考:チーム・サンウェブの『サンウェブ』って何の会社?

したがって、フランス人選手であり、総合エースを狙いたいバルギルの移籍はやむを得なかっただろう。

アシスト陣はやや戦力ダウン

デュムランが兄貴分と慕うテンダムは登坂力も兼ね備えたオールラウンドにアシストできる選手だ。ジロでは、ケルデルマン不在のなかでテンダムがいなければデュムランのマリアローザはなかったかもしれないほどに、身体を張った猛アシストを見せていた。

ゲシュケもテンダムと同様にオールラウンドにアシストできる選手だ。同じくジロでは獅子奮迅の活躍を見せ、デュムランの総合優勝に大きく貢献している。

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テンダムもゲシュケも本職はルーラーで、特に逃げを得意としている。集団牽引だけでなく、逃げに乗って逃げ集団を牽制する動きも任されるだろう。

同じようにオールラウンダータイプのアシストだったプライドラーの移籍が非常に痛手だ。このクラスの選手はなかなか替えが効かない。

プライドラーの後釜としては、ケムナに期待している。世界選手権U-23ロードでは、終盤に優勝したブノワ・コズネフロワと共に抜け出して逃げ切ってみせた。かなりの大人数を残す大集団を振り切る独走力が持ち味だ。身長181cm・体重65kgと細身な体型をしており、ある程度の登坂力も持っているため、ケムナがプライドラーの役割を果たす日はそう遠くないだろう。

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新戦力では、ヴェルヴァークとトゥスフェルトは上りに強い選手だ。とはいえクライマーではなく、オールラウンダータイプのアシストとして様々な役割をこなすことになるだろう。

楽しみな選手はネオプロのストーラーとヒンドレーだ。

ストーラーはツール・ド・ラヴニール(2.Ncup)総合9位と一定の登坂力を示した上に、2クラスのレースでは逃げ切り勝利も飾っていて、やはり総合力が高い選手だといえよう。

ヒンドレーはヘラルドサンツアー(2.1)新人賞、U-23版ジロ・デ・イタリア1勝&総合3位、ツール・ド・ラヴニール総合10位、そしてツアー・オブ・福州(2.1)で総合優勝を飾るなど好成績を残している。総合系の選手として成長が期待される。

とはいえ、プライドラーの抜けた穴は大きく、引退したティマーや移籍したルンケの穴も埋まっていない。全体としては戦力ダウンが否めない構成だ。

春のクラシックはマシューズを中心に

北のクラシックでは絶対的エースは不在だ。

新加入のトゥーンスがパリ〜ルーベ8位、テウニッセンがドワルス・ドール・フラーンデレン16位、アンデルセンがヘント〜ウェヴェルヘム16位といったところだ。

石畳に向いていそうなアルント、バウハウス、ヴァルシャイドら重量系スプリンターが今後北のクラシックに力を入れる可能性もあるが、現状ではグランツールやステージレースに重点を置いているだろう。

そして、アルデンヌクラシックの絶対的エースはマシューズだ。アムステルゴールドレース10位だったが、クライマー向きとされるリエージュ~バストーニュ~リエージュでは4位に入っている。

集団スプリントで勝てるようなスプリント力を持ちながら、リエージュで一桁順位で完走できる登坂力を持っていることがマシューズ最大の強みである。スプリンターがまず生き残ることができない上りを、マシューズはクリアできる。そのアドバンテージは計り知れない。

参考:ヒルクライム能力を向上させたマイケル・マシューズの野望とは?

ゆえにマシューズは、2017年のワールドツアー個人ランキングで9位となる2049ptsを稼ぎ出した。マシューズ以降には、アルベルト・コンタドール、フィリップ・ジルベール、リッチー・ポート、ナイロ・キンタナとビッグネームが続いている。幅広い局面で活躍することができるうえに、常に上位に食い込む安定感もあり、シーズン4勝ながら多くのポイントを獲得したのだ。

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アルデンヌクラシックだけでなく、2015年ミラノ〜サンレモ3位、2017年ヘント〜ウェヴェルヘム8位とスプリンタークラシックや石畳を含むレースでも結果を残しているが、狙うはモニュメント制覇だろう。マシューズの脚質ならば、アムステルとリエージュの勝利を十分に狙えるはずだ。

伝統的なスプリンターチームとして

マルセル・キッテルやジョン・デゲンコルプを輩出したチームであるためか、伝統的にスプリントに強く、良いスプリンターが次々に育つ。

なかでも次代を担うエーススプリンターはアルントだろう。2016年ジロ第21ステージで勝利し、2017年はカデルエヴァンス・グレートオーシャンロードレースで勝利した。しかし、以降はマシューズのアシストを務める機会も多く、勝利に恵まれなかった。

一方でツール第20ステージの個人TTでは、リゴベルト・ウランやシュテファン・キュングらを上回るステージ7位となっており、高い独走力を持っている。もしかしたら、ピュアスプリンターとして集団スプリントに挑むより、ワンデークラシックのような走り方の方が彼に向いているのかもしれない。

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2016年のツアー・オブ・海南(2.HC)で5勝をあげたヴァルシャイドも楽しみな重量系スプリンターだ。身長199cm・体重89kgの巨体から繰り出されるパワーは凄まじいが、一方で上りが非常に苦手でなかなかスプリントに絡めないケースも多々ある。それでも、ツアー・オブ・デンマーク(2.HC)でステージ1勝を飾っており、ツアー・オブ・広西ではフェルナンド・ガビリアに肉薄し、2度ステージ2位に入った。

そして、トレック・セガフレードから獲得したトゥーンスにも期待がかかる。2017年はビンクバンクツアー第4ステージ、ツアー・オブ・ターキー第6ステージで勝利している。

オランダ王者のシンケルダムが移籍した穴は、彼が十分に埋めてくれるだろう。発射台も務めることができるし、場合によってはトゥーンスがエースを担うケースも多くなるはずだ。

ツールなどマシューズが出場するレースでは、ポイント賞ジャージ獲得のためにマシューズがエーススプリンターを務めるものと思われる。

チームの大黒柱が2本確立していて、同時に育成も行う

グランツール:★★★★★
北のクラシック系:★★☆☆☆
アルデンヌクラシック系:★★★★☆
スプリント:★★★★☆

デュムランとマシューズが、2017年と同様にチームを牽引していくことだろう。2017年シーズンのサンウェブのワールドツアーチームランキングは4位で、2人でチーム獲得ポイントの半分以上を稼ぎ出している。

デュムランのジロ連覇なるかどうかが最大の見どころではあるが、プライドラーの移籍が大きく、アシストは若干戦力ダウンとなっている。しかし、2017年もサンウェブのアシストは元々強くはないと言われつづけていたなかで、ジロの総合優勝はアシストの力が大きく影響しており、ツールでもバルギルとマシューズがそれぞれ2勝ずつあげて、山岳賞とポイント賞を獲得したのもチームの総合力が高かったからだ。

個々の選手の走りから受けるイメージよりも、チームの結束力が高いことやレース戦略が良い方に強い印象を受ける。

そして所属選手23名中12名が、2018年シーズン開幕時点で25歳以下の選手で構成されている。チーム全体の平均年齢26.2歳は、ワールドチーム前チームのなかで最も若い。

実績はない選手が多いかもしれないが、裏を返せば伸びしろがたくさんあるというわけだ。

デュムラン、マシューズというワールドツアーランキングで一桁順位に入る実力を持つ選手を2人も抱えながら、全チーム中最も多く在籍する若手選手を起用して戦うことができるのだ。

本当に強いチームとは確固たる主軸が活躍し、同時に育成を行うことができるチームだと考える。ならば、サンウェブはまさに真の強豪チームの途上にあるといってよいだろう。数年以内にはサンウェブの黄金時代の到来を予言したくなるほど、チームの方向性が素晴らしい。

デュムラン、マシューズに続く新たなヒーローの誕生と、テンダムやゲシュケのようなスーパーアシストの出現を楽しみにしながらサンウェブの走りに注目していきたい。

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